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逢瀬は月見橋で
第4章 男の正体は・・

「そうだったんだ・・」


そう一言言っただけで、あたしは貝のように口を閉ざした。

あんなに激しく交尾しておいてこんな切ない話聞かされちゃあ、
出てくる言葉なんてありゃしない。
かわいそう・・
かわいそすぎるよ・・・


「な~んだ、咲穂ちゃん意外とイイ人なんじゃん。
 オレの話に涙してくれるなんてさ」


涙を我慢して唇を震わせていると、正次郎が小さな笑い声をあげた。


「なによ・・意外、じゃなくってイイ人なんだよ、ほんとのあたしは!」


どなったら、その勢いで涙が飛び出た。
でもすぐに笑い出した。
他人のために涙なんか流す自分がおかしくっておかしくって・・


「ほんと、咲穂ちゃんはイイ人だよ。
 この町にしてよかった、こんないい人がいる街でさ」


声にはわざとらしさがにじんでいたが、
これ以上反撃するとよけいに涙しそうだから頬を膨らませて話に区切りをつけた。



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