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逢瀬は月見橋で
第4章 男の正体は・・

缶のプルタブを開ける二重奏の後、喉を鳴らしながらビールを飲んだ。


「あ~美味い!ビールがこんなにおいしいって感じるのは久しぶりだよ。
 やっぱ酒は楽しいに限るね」

「そんなにしみじみ言うなんて・・うまい酒、飲めてなかったんだ」


チラッと横顔を覗き見る。
酔いが回るにはまだ早いだろうが、
だらりとした笑顔はほろ酔いのユタカの表情に似ていた。


「病院勤めの時はほとんど飲まなかったし、
 女房が死んだ時はがぶ飲みだったから味なんてわかんなかった・・
 だから今夜が久しぶりのうまい酒、なんだ」

「そっかぁ・・じゃあ今度、あたしが働いてたスナックへ連れていってあげる。
 診療所の先生なら大サービスしてくれるよ」

「じゃあ是非」


ニコッと笑うと残りのビールを一気に流し込む。
あたしもつられて一気に飲む。

飲み干して、缶をクシュッとつぶすと、


「じゃあそろそろ送っていくよ」


正次郎は床のシャツを手にして立ち上がった。

シャツを羽織るとあたしにむかって手を差し出した。
正次郎の顔と差し出された手を交互に見てから手を取ると、
グイッと引き起こされた。

あたしは・・ぼそっとつぶやいた。



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