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逢瀬は月見橋で
第1章 月見橋で・・


「ちょっと都会に、っていうか、
 生きることイコール経済力、みたいな生活がやんなってね。
 かといって他県に出ていくのはさみしいからここへ来たんだ」


その話しぶりから、どうやらこの男は右半分から来たらしい。
生きるための収入源はきっと十分な、いやそれ以上のものだったのかもしれない。
いったいどんな仕事をしていたのだろう。

気になるから聞いてみた。
でも男は教えてくれなかった。


「どこに住んでもできる仕事、って言っておこうかな」

「ふ~ん、教えてくれたっていいのに、ケチ!じゃあ家族は?」

「いない・・天涯孤独ってやつ」


寂しい話なのにこの男、ゆったりとした笑みを浮かべて。
それを見てたら、何も知らなくたっていいと思えた。
今ここで、こうしてあたしの相手をしてくれてるだけでいいじゃん、と思えた。


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