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給湯室
第1章  
彼女が顔を横に振る。
その時だった、くぐもった音で音楽が鳴りだした。
彼女のベストのポケットに入っていた携帯電話だ。
彼女は手探りでありかを探し、取り出した。
携帯電話を覗き込む。
出ようか、出まいか迷っているようだった。
「誰からだい?」
彼女は何も言わなかった。
黙ったまま携帯を見つめてる。
音楽はまだ鳴り続けていた。
それでも彼女は動かなかない。
それから10秒ほど経ったが音は鳴りやまなかった。
「誰からだ?……もしかして彼氏からか?」
小さくうなずいた。
まだ鳴っている。
「出ないと怒られるんじゃないかね? 出なさい、遠慮せずに……怪しまれるよ……浮気してるんじゃないかと……ははは」
まだ躊躇していた。
「黙っているよ、約束する。出なさい。心配させると余計まずいことになる、さあ」
彼女はボタンを押し、ゆっくりと耳に当てた。
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