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給湯室
第1章  
「いえ、本当でごさいます……三原様……三原様のは大きくて、それで突かれますと、仕事を忘れそうになります……」
「そうか……やっぱり君はこの店では一番だよ……また指名させてもらうよ……」
「ありがとうございます。三原様、またご連絡お待ちしております。ではお気をつけてお帰りくださいませ……」
彼女は深々とお辞儀した。
私は手を上げ、入ってきた小さなドアから出た。
薄暗い廊下に立つ。
廊下は両側に続いている。
正面にも同じようなドアがあった。
「社長室」と書いたプレートが貼ってある。
右の方へ向かう。
両側にまたドアが二つ現れる。
右側には「女子更衣室」と書いたプレートが張ってある。
その向かい側は「地下室」だ。
先へ進むとまたドアが二つあった。
「保健室」反対側は「体育用具室」のプレート。
廊下の突き当たりの扉まで来た。
この扉は金庫室の扉のように丸い大きなハンドルが付いている。
扉の脇には、口ひげを生やし、きちんと蝶ネクタイを巻いた、歳は三十くらいの黒服のボーイが立っていた。
「お疲れ様でした。三原様。またのお越しをお待ちしております」
私は軽くうなずいた。
ボーイがハンドルを回し扉を開ける。
暗闇で何も見えない。
すえた臭いが鼻に届く。
表に出る。
高いビルの間の細い路地だった。
20メートルくらい先の路地の出口は、まだネオンが明るく灯り、車と人が行き来するのが見えた。
喧騒もここまで聞こえてくる。
後ろでドアがしまった。
振り向いた。
ドアには取っ手もノブもなく、ドアがあったところは薄汚れたコンクリートの壁と同化した。
私は大通りに向かって歩き出した。


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