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公衆便所から始まる
第9章 stand by me!
急ぎ足で近づいて、すれ違いざまに顔を見る。
ばっちりと、目が合った。
「あ……」
ぽかんと口が開いて、足が止まった。
後ろを歩いてた人が、邪魔そうによけてく。
一拍遅れて相手も小さく唇を動かす。
「てる……」
俺は心臓が潰れそうだった。
俺は会いたかった。で、目の前にしてやっぱり会えて嬉しかった。
だけど有紀人さんは?
俺のことどう思ってる? 黒歴史?
有紀人さんが小さく目に後悔を浮かべるのを、そしてそれが喜びに塗り変わるのを、スローモーションみたいにはっきりと俺は見た。
━━奇跡。
大げさじゃなくそう思った。
だって、有紀人さんの心に俺の居場所がまだあって、俺は近藤さんのおかげで自分に答えを出せてて。
俺は有紀人さんの指先に挟まれて宙に浮いてたチラシを受け取って、その手に名刺を滑り込ませた。
この機会を逃しちゃいけない、ってそれだけを思って。
「あの、仕事終わったら連絡していいっすか!?」
「ぁ……」
有紀人さんの喉がひくっと動いて、俺は慌てて言い添える。
「あ、いや、ちゃんと店終わった頃にしますんで! てかそのぐらいにはなるはずなんで!」
有紀人さんは、目を丸くしてはっと息を吐いて、それを吸って、
「っハハハハハハ!」
笑い出した。大声で。
買い物中の子連れ主婦も、向かいのお茶屋さんのおっちゃんも、みんな見る。
俺はどうすることもできず、体を折って苦しそうに笑い続ける有紀人さんをただ見てるうちに、なんだかおかしくなってきて。
二人で笑い転げながら店の中に退避した。
人の流れを遮りっぱなしも迷惑だから。
ばっちりと、目が合った。
「あ……」
ぽかんと口が開いて、足が止まった。
後ろを歩いてた人が、邪魔そうによけてく。
一拍遅れて相手も小さく唇を動かす。
「てる……」
俺は心臓が潰れそうだった。
俺は会いたかった。で、目の前にしてやっぱり会えて嬉しかった。
だけど有紀人さんは?
俺のことどう思ってる? 黒歴史?
有紀人さんが小さく目に後悔を浮かべるのを、そしてそれが喜びに塗り変わるのを、スローモーションみたいにはっきりと俺は見た。
━━奇跡。
大げさじゃなくそう思った。
だって、有紀人さんの心に俺の居場所がまだあって、俺は近藤さんのおかげで自分に答えを出せてて。
俺は有紀人さんの指先に挟まれて宙に浮いてたチラシを受け取って、その手に名刺を滑り込ませた。
この機会を逃しちゃいけない、ってそれだけを思って。
「あの、仕事終わったら連絡していいっすか!?」
「ぁ……」
有紀人さんの喉がひくっと動いて、俺は慌てて言い添える。
「あ、いや、ちゃんと店終わった頃にしますんで! てかそのぐらいにはなるはずなんで!」
有紀人さんは、目を丸くしてはっと息を吐いて、それを吸って、
「っハハハハハハ!」
笑い出した。大声で。
買い物中の子連れ主婦も、向かいのお茶屋さんのおっちゃんも、みんな見る。
俺はどうすることもできず、体を折って苦しそうに笑い続ける有紀人さんをただ見てるうちに、なんだかおかしくなってきて。
二人で笑い転げながら店の中に退避した。
人の流れを遮りっぱなしも迷惑だから。