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月の吐息
第2章 満月
エレベータが開くと、黒い壁に筆記体で「Dance」という文字が見える。
来訪の鈴の音に、ウェイターが足早にやってきて、一瞬驚いた顔をする。
「いらっしゃいませ」
「どうも・・・」
女1人という状況に、やや気まずさも感じたけど、こないだと同じウェイターが、笑顔で一礼してくる。
誕生日の前祝いをしたかったんだけど、金曜の夜だからか、今日の今日で、友達が皆、捕まらなかった。
でも、流石に家でレンタルDVDは寂しくて。
「先日も、いらしてましたよね」
「え? えぇ。あの、1人で来ちゃったんですけど・・・」
「お一人のお客様も大歓迎ですよ。カウンターにされますか?」
流石に混み合ってる。
ピアノに隣接したカウンターが2席、こないだ座ったバーテンの傍のカウンター席が1席、丸テーブルが奥に1組分、空いている。
カウンターの席へ案内してもらうと、時計を見上げた。
もうすぐ、9時。今日もピアノ、聴けるかな。
「何か、お作りしますか?」
ふと、綺麗なテノールに話しかけられた。
今日は、渋いバーテンとイケメンのバーテン、立ってる位置が逆なのね!
相変わらずのイケメンぶりに、思わず姿勢を正したりする。
こないだは会話も出来ずに遠くから眺めてただけだから、それだけで今日来て正解だった感じ。
「んー・・・」
「お悩みでしたら、オススメにしますか?」
「あ、じゃあ、それで」