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講義の終わりにロマンスを
第3章 変装と女心
1Kの部屋に帰宅して、俺は、詩織さんからのLINEを読み直すと溜息をついていた。
『真菜ちゃんと、ちゃんと話をしてあげてね』
"既読"をつけてから、30分以上、全く返事の言葉が浮かんで来ない。
こんな夜に返信をしても、安眠妨害になるだけだし、と言い訳しながらも、どう返事をすればいいか考えはまとまる気配ゼロだった。
ベッドに寝転がって、白い天井を見上げると、眉を寄せる。
彼女は、見たことのない格好で、見たことのない髪型で、不意に自分の職場にやってきた。
偶然か?
いや、そんなはずは無い。
俺が座席に案内する間、彼女は俯いて顔を隠していたし、もし本当に偶然なら、その場で俺に声をかけたはずだ。
でも、それなら、なんで―――。
なんで彼女は俺のバイト先を知っているんだろう。
そして、どうして、変装なんてしてBARに来たんだろう。
「あー・・・」
明日は火曜日なのに、気が滅入る。
こんなに、彼女に会いたくないと思ったのは、初めてだ。
いや、"会いたくない"は違うか。
"会いにくい"が的を得ているかもしれない。