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講義の終わりにロマンスを
第5章 My Romance
* * *
その日、小鳥遊は真菜と出会ってから一番紳士的な対応をしていたかもしれない。
先に2人の間のわだかまりを解く必要があるだろうから、と、彼はスマホのストップウォッチ機能を使って30分の話し合いを設けた。
ルールは2つ。嘘をつかないこと。沈黙は3秒まで。
二人共、時に顔を赤らめたり視線を反らしたりしながら、それでも話し合いをやりとげた。
分かったこと。
真菜が本気で小鳥遊に恋していること。
小鳥遊も真菜を意識していること。
それでも、真菜が高校を卒業し、大学入学するまでは「付き合う」ことは出来ないこと。
真菜が大学に入学するまで、小鳥遊は彼女を作らないと誓ってくれたこと。
そして、二人共、相手を思いながら自分を慰めたことがあること―――。
「凄い赤裸々な話し合いだったなー」
軽い世間話のように言いながら、小鳥遊が鞄からノートを取り出している。
「先生、そんな適当な言い方しないでください」
話し合いの中で、真菜も踏ん切りがついたのか、容赦なく言葉を投げるようになってきた。
「え、適当に聞こえた? やだな、そんな風に思ってないよ?」
それでも軽々と彼女の言葉をあしらうと、小鳥遊はテキストに貼った付箋に指をかける。
「さ。今日の単元、一気に終わらせるよ。ちゃんと小テストまで済ませたら、真菜ちゃんにプレゼントがあるから」
「プレゼント? 何ですか!?」
「それは内緒。ほら、テキスト開いて」
小鳥遊の表情が真剣になる。
こうなったら先生は"先生"なのだ。
肝心なところは、しっかり押さえるし、ふざけ過ぎることだって無い。
たった2年程の付き合いでも、それは分かっていた。
深呼吸してから、彼女はテキストを開いた。