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まのめのロイン
第2章 答
長身の痩せた男。全身黒づくめ。
黒づくめというのはその身を包む、催眠書から抜け出た文字から出来た衣服のせいだ。
衣服、と言ってよいものかわからないが、そうたとえさせてもらおう。
もぞもぞと、うじゅうじゅと蠢く文字の連なり。
言葉の大群。
遠目に見れば黒いレザーの上下に見えるだろう。
だが、それは黒く濡れ光る昆虫の群れのような集合体なのだ。
そして長い黒髪。
顔の半分を覆うようにして、ぎらぎらと光る右目だけが異様に目立つ。
顔は蒼ざめて死人のよう。
いや、死人ほどではないか。
そうだな……そうだ、ヴァンパイアみたいと言えばわかるだろうか。