この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
下剋上ラバーズ
第2章 めんどくさい隣人
すごむと、女は観念したようにそう言った。そしてよろよろと立ち上がり台所まで歩いていくと、ポリ袋に氷をがさがさ詰め込んで戻ってきた。
俺が手に奴の死骸入り袋を持っているせいか、半径一メートル以内には寄ってこない。
『どうぞ』
『おう』
『あの……まあ……なんだかんだで、ほんとうにありがとうございました助かりました。迷惑かけてごめんなさい』
『もう虫ごときで騒ぐなよ。キンチョールでもゴキジェットでも買っとけ』
『バルサンも買います。……あ、よかったらこれ、実家から送られてきたじゃがいもあげる! お礼に!』
『お礼とかいらねーから。今後騒がなければそれで』
『ええ……いっぱい送られてくるから食べきれなくて困ってたのに……』
『さてはお礼じゃねえな』
言うと、女はへへ、と笑った。俺はそのとき、初めてその女をまじまじと見た。
大きな猫目、鼻頭のほっそりした鼻梁、桜色の小さな唇に、抜けるような白い肌、そして、そこまでの清涼な美しさを真っ向から否定するような、けばけばしい金髪。
アンバランスだった。清廉さとくたびれが入り混じったような。情熱と諦念が同居するような。そんな奇妙なアンバランスさだった。
でも、そのアンバランスさに、何か言い知れない魅力を感じたことを、俺はここで認めておこう。本人には絶対一生言わねえけど。
俺が手に奴の死骸入り袋を持っているせいか、半径一メートル以内には寄ってこない。
『どうぞ』
『おう』
『あの……まあ……なんだかんだで、ほんとうにありがとうございました助かりました。迷惑かけてごめんなさい』
『もう虫ごときで騒ぐなよ。キンチョールでもゴキジェットでも買っとけ』
『バルサンも買います。……あ、よかったらこれ、実家から送られてきたじゃがいもあげる! お礼に!』
『お礼とかいらねーから。今後騒がなければそれで』
『ええ……いっぱい送られてくるから食べきれなくて困ってたのに……』
『さてはお礼じゃねえな』
言うと、女はへへ、と笑った。俺はそのとき、初めてその女をまじまじと見た。
大きな猫目、鼻頭のほっそりした鼻梁、桜色の小さな唇に、抜けるような白い肌、そして、そこまでの清涼な美しさを真っ向から否定するような、けばけばしい金髪。
アンバランスだった。清廉さとくたびれが入り混じったような。情熱と諦念が同居するような。そんな奇妙なアンバランスさだった。
でも、そのアンバランスさに、何か言い知れない魅力を感じたことを、俺はここで認めておこう。本人には絶対一生言わねえけど。