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下剋上ラバーズ
第2章 めんどくさい隣人
『……じゃあ俺帰るわ』
額に氷袋を当てつつ、所々にぽつぽつと覗く足の踏み場を縫いながら玄関に行きつく。靴に足を入れたところで、『待って』と呼び止められた。
『今度、ほんとに何かお礼するよ! んー、なんか奢る!』
『いいって』
『お願い! あたしがしたいだけだから! 借り作ったままってなんか嫌だし』
『借りとか思わなくていいから。そういうのめんどくせーし』
『じゃあもう単刀直入に言うね! あたしと仲良くしてください!』
『……は?』
『名前は?』
『……黒瀬真尋』
前のめりに訊かれて、思わず答えてしまった。すると女は、にこ、と笑う。
『あたし百田沙耶っていいます。まあ、これも何かのご縁ってことで、よろしく』
裏も表もなさそうな、毒気のない笑顔。
……こんな野蛮な女はねえなと思ったし今も思ってるけど。まあただの隣人としてよろしくってことだろうし。
ひょい、と差し出された、女――百田沙耶の右手を握ろうと左手を伸ばす。小さくて細くて、白い手。
そこで俺ははっとした。……百田沙耶?
額に氷袋を当てつつ、所々にぽつぽつと覗く足の踏み場を縫いながら玄関に行きつく。靴に足を入れたところで、『待って』と呼び止められた。
『今度、ほんとに何かお礼するよ! んー、なんか奢る!』
『いいって』
『お願い! あたしがしたいだけだから! 借り作ったままってなんか嫌だし』
『借りとか思わなくていいから。そういうのめんどくせーし』
『じゃあもう単刀直入に言うね! あたしと仲良くしてください!』
『……は?』
『名前は?』
『……黒瀬真尋』
前のめりに訊かれて、思わず答えてしまった。すると女は、にこ、と笑う。
『あたし百田沙耶っていいます。まあ、これも何かのご縁ってことで、よろしく』
裏も表もなさそうな、毒気のない笑顔。
……こんな野蛮な女はねえなと思ったし今も思ってるけど。まあただの隣人としてよろしくってことだろうし。
ひょい、と差し出された、女――百田沙耶の右手を握ろうと左手を伸ばす。小さくて細くて、白い手。
そこで俺ははっとした。……百田沙耶?