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下剋上ラバーズ
第2章 めんどくさい隣人
 つい数日前の、木曜一限のことが頭をよぎる。

『お前か! 百田沙耶って』

 俺は、沙耶の柔らかい手を握りながら思わず言った。

へえ、なるほど、こいつが。なんだかすごい偶然のことのような気がして、まじまじと顔を見てしまう。

 沙耶は、きょとん、としていた。

『え? なに?』

『木曜一限の社会学、取ってるのに一回も出席してないだろお前』

『えっ、なんで知ってんの』

『俺も取ってるから。毎回点呼で出席確認すんの。お前毎回いないから』

 すると沙耶は罰が悪そうに目を逸らし、つらつらと言い訳をつぶやく。

『いやあ、行こう行こうとは思ってんだけどね。一限ってなるとどうしても朝起きられなくて……。他の授業はちゃんと出てるよ! マジで!』

『お前今週の授業出席しないと単位出ないぞ』

『はっ!? なんで!?』

『出席日数足りねえから』

『テストで点数取ればいいんじゃないの!?』

『五回以上休んだら受験資格さえねえよ』

『うそん!?』


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