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蜜刻に揺れて
第2章 Whimsical star
「今日、送別会だろ?上がっていいぞ」

一人前の仕事もやれているとは言い難いのは自分でもわかっていた。

が、今夜は店舗の同僚達が営業への異動を栄転と見なして送別会と称した飲み会を企画してくれていた。

「あ、はい、これだけ入力したら…」

「私なら10分でやれますから、貸してください」

横から美和子に攫われた書類を見送ると、本当にあっという間に入力を終えてしまう。

「ありがとう」

「いえ、仕事ですから」

ばっさり切り捨てられて流石に静も次の言葉が見当たらなかった。

周りに挨拶して、先に上がる。

エレベーターに乗るとメールを確認した。

''人面桃花、タローより''

静はその言葉の意味を調べて、返信出来なかった。

からかわれてる。

甘い言葉にのせられたら、その後どうなるか、そんな事も想像出来ないような歳ではなかった。


「では!お疲れ様です!静さん、おめでとうございまーす!」

生ビールより、チューハイやカクテルのグラスが多めに音を立てて合わさる。

店の売り上げやら、常連さんからの名残惜しという声を聞くと、切なさが胸に広がってしまう。

つい一週間前まで、売上だの仕入れだのこの輪の中にいたのに。
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