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蜜刻に揺れて
第2章 Whimsical star
静は上手く席を立ち、トイレでスマホを開く。

''胡馬北風のハナコを慰められるのはタローだけ''

「なにそれ…別に寂しくないし…」

溢れた台詞に涙が滲む。

''慰めきれる訳ない''

憎まれ口を返して、トイレを出る。

席に戻れば、店の愚痴から個人の愚痴に変わっていた。

お酒が深くなると絡み酒になり、その標的は店員の男の子だったり、近い席のサラリーマンだったり。

何処と無く疎外感にお酒が上手く回らない静はこっそりメールを開いた。

''何処で飲んでる?終わる頃教えて''

一人息を呑み腕時計を確認すると、もう11時前だった。

「あ、私、そろそろ…」

「えー?しずかさん、もぉかえっちゃうのぉー?そういえばー…」

話しはどんどん飛び火して、静は苦笑いで肩を竦めた。

自分の分を会計し、店を出るときに最寄り駅をメールした。

''目印は?''

置き忘れていた荷物の中からニット帽子を取り出し、お祝いの小さな花束からマーガレットを一本抜き取った。

「ニット帽にマーガレット、判んなかったら…帰ればいいか」

会いたいような会いたくないような、混じった気持ちが意地悪な返信になってしまう。
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