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蜜刻に揺れて
第3章 leave behind
塞がれた唇はゆっくりとなぞられる。

「ふっ…ぅ、ンッ…」

耳朶を擽られ、開いた唇に温かい舌が割り入れられた。

「ん…ぁ…」

吸い込んだ空気に混じって、鼻腔を擽る竜の香水だかの香りに頭がクラクラする。

舌はゆっくりと口腔を愛撫していく。

口蓋の粘膜を、歯列をなぞり、舌を絡め捕られ吸い上げられる。

性急でないその焦ったい動きを、静は従順に受け入れていた。

ゆっくりと唇が離れていくと、つんと鼻先が当てられる。

視界いっぱいに埋め尽くされた竜の整った顔立ちに静は魅入るしかなかった。

甘くて精悍な顔つきの何処かに幼さのあるバランスの良さ。

真っ直ぐに見つめられて平然と出来る女などきっといない。

エレベーターのドアが開く。

ほんの十数秒の行為だったのに、ずっと長く感じた。

「行きますか」

右手に導かれるまま玄関を目指す。

ああ、これは夢だ。

夢なら説明がつく。

自分に都合の良い夢。

あの白いドアの向こうは非現実。

「あ、言っとくけど、ここに連れてきた女はハナコが2人目だから」

「な、に言って…」

「ちなみに一人目は…病人だったから、実際はハナコが初めてなんだなー」


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