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蜜刻に揺れて
第3章 leave behind
不安、だろうか、この胸に広がる霧の様なモノは。

それとも…。

「ハナコ、顔が怖い」

眉間に皺が寄る静に竜は目を細める。

「そんな考えてなくて大丈夫」

「え?だってタローは…」

「あー…ハナコさぁ、ワガママ言わないでしょ?」

探る様な瞳を向けられて、静は絶句する。

「可愛いオンナは適度にワガママを…「可愛くないなんて知ってるってば!」

静は唇を噛んで竜を遮った。

「…可愛くなんて…ない…」

「ハナコ?」

「ハナコじゃない、花屋じゃない、ただの営業だも…っ…ふっ…」

自分で言ったそれは途端に堰を切ったように流れ出す。

「販売…がっ、好きなのに…営業…な、て…上手くできな…のに…っ!」

ぼたぼたと溢れる涙を拭いもせず、溜まってたものを全部吐き出す。

「販売にっ…戻りたいよぉ…」

「はっはっはっ、無理だな」

「なっ…!」

「戻すくらいなら攫いに行かないだろ?居るべき所に居るんだよ」

高く笑いながら静の額を指で弾く。

「わかった様に言わないで!」

「分かんないですー」

軽い口調に、静の涙は止まっていた。

くんっと腕を引かれると収まった先は竜の胸の中。

「よしよし、良い子だねー」

「バカにしてるでしょ?」

頭上ではクスクスと笑い声が漏れていた。




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