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蜜刻に揺れて
第4章 Unclear delineation
「最近調子良いじゃん、何かあった?」

定時をとっくに過ぎたオフィスで、航平がパソコンの電源を切りながら尋ねた。

「んー、営業もいいかもって思っただけ」

「おっ!良い心がけだな、飲みに行くか?」

「ごめん、妹が今夜猫を引き取りに来るから、またね」

時計を気にしつつ足早に帰宅する。

玄関の向こうでニャーニャーと声がすると、鍵を探すのにも手間取ってしまう。

「あーもう、こんな時に誰?」

鍵を開けながら、スマホを首に挟んだ。

「もしもーし、円?」

『マドカって誰だよ?』

妹の円にしては声が低い。

「…どちら様ですか?」

『は?忘れたの?』

「えっと…あ、ごめんごめん、今ご飯用意するから」

猫と一緒に渡された紙袋から最後の猫缶を開ける。

『ご飯って、そこにいるの誰?俺以外を家に入れて電話してるなんていい度胸だな、ハナコ』

「ハナ、コって…タロー?何で?!」

『報告しろって言ったのにいつまでも連絡して来ないから、しょうがなく…』

「あぁ、零さないの!ごめん、タロー!後で掛け直すから!」

一方的に電話を切り、雑巾を手に掃除をし始めた。

毛繕いを始めた猫を膝に乗せ、癒されているとインターホンが鳴った。
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