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蜜刻に揺れて
第5章 Fearlessmile
「金とるよ?」

じっと見つめていたのを気付かれて竜はにやっと笑った。

部屋に戻ると無音が嫌で点けたテレビのお笑い番組を腹を抱えながら笑い転げる竜を隣に、買ってきた雑誌をめくった。

魅せてる表情だとわかる。

今隣で笑い転げている竜とはまるで別人だった。

Q&Aになっているコーナーを読み漁るけれど、どれも何か違う気がした。

秋月 竜が知りたい。

肩書きのない、ただの竜が。

でも、踏み込めない。

それを竜は望んでいない気がする。

都合の良い関係。

無邪気に笑う竜の凍りつく顔は見たくない。

「タロー」

「んー?」

竜と呼べば何か変わるだろうか?

「あの…」

言いかけたそれは着信によって阻まれた。

画面に表示されたのは''雅希''だった。

今更何で。

静はスマホを手に取ると竜に背を向けて、窓際に立ち電話に出た。

「もしもし」

『静?俺…』

「元気?」

何を当たり障りのない会話をしているのか。

『静は?元気?航平から営業に異動になったって聞いたからさ、その…どうかなって』

「ありがと、助けてもらって何とかやって、るっ、よ」

夜は窓ガラスを鏡に変えて直ぐ後ろに立つ竜を映しだしていた。


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