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蜜刻に揺れて
第6章 Ambiguous Peony
考えても心当たりがない。

顔を見ずにする?いつした?

昨夜だって窓ガラスに映る静はきっと悦楽の底まで漂ったと思っていた。

まさか、いつもそういう演技をしてたのかと竜は自分を省みるけれど、静の深芯を直に感じていた。

あの反応は…あの反応で違ってたら立ち直れそうにない。

「竜ってさ、自信家だよね」

「何それ?」

「態度で示すって感じ」

浩一郎の言わんとすることが今一伝わってこない。

「言葉が足りない」

雑誌を見つめたまま呟かれたそれは竜には思い当たる節がなかった。

「何の話し?」

撮影を終えた啓介がその場に合流する。

「今、司の番だから浩一郎アップしとけよ、で?何の話し?」

「竜は薄情で言葉足らずで欲望に忠実なオトコだっていう確認」

竜は否定してくれる一抹の期待を込めて啓介を見つめた。

「残念、その通り」

「啓介さんまで…俺ってそんなヒドイ?」

「そう言われたのか?」

誘導尋問の様に静の存在に行き当たった事で竜は口を噤んだ。

「俺のもんだって言ったのに聞いてないあいつが悪い」

竜は手の甲で声を抑えながら、一人毒づいた。

「竜さん、お願いしまーす」

ドアからマネージャーの貴文が顔を覗かせて、竜は不貞腐れながら立ち上がった。


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