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蜜刻に揺れて
第6章 Ambiguous Peony
デリランチを平らげると会社へと早々に戻り花材の手配の確認に追われた。
美和子のフォローも完璧で、静は営業にやりがいを感じ始めていた。
「静、雅希から連絡あった?」
「あ、うん、先週…」
「何て?」
「元気かって、航平が言ってくれたんでしょ?ありがとね、気を遣わせちゃったよね」
パソコンの画面を見つめたまま、航平の怪訝な表情は伝わらない。
「また、会うのか?」
「んー、その内にはね、電話もなんかふつーだった」
そう、普通だった。
もっと取り乱すかと静自身も思っていた。
あんな一方的な振られ方、納得も何もない。
けれど、あの時も今も雅希を思い出しても小々波すら立たない心境に静は自嘲していた。
「ふつー、ね」
航平の方が納得出来ない声色で呟いた。
仕事帰りの電車に揺られてスマホを取り出す。
メールも着信もない。
連絡して来いよと言っていったから、きっとするまでして来ない。
でも。
静は溜息を一つ零して鞄にしまった。
玄関の鍵を開ける度にディンプルキーが高い音を立てる。
いつまでも、これがある限り繋がりは切れないと思うと、切なさと愛しさに立ち止まって動けなくなる。
美和子のフォローも完璧で、静は営業にやりがいを感じ始めていた。
「静、雅希から連絡あった?」
「あ、うん、先週…」
「何て?」
「元気かって、航平が言ってくれたんでしょ?ありがとね、気を遣わせちゃったよね」
パソコンの画面を見つめたまま、航平の怪訝な表情は伝わらない。
「また、会うのか?」
「んー、その内にはね、電話もなんかふつーだった」
そう、普通だった。
もっと取り乱すかと静自身も思っていた。
あんな一方的な振られ方、納得も何もない。
けれど、あの時も今も雅希を思い出しても小々波すら立たない心境に静は自嘲していた。
「ふつー、ね」
航平の方が納得出来ない声色で呟いた。
仕事帰りの電車に揺られてスマホを取り出す。
メールも着信もない。
連絡して来いよと言っていったから、きっとするまでして来ない。
でも。
静は溜息を一つ零して鞄にしまった。
玄関の鍵を開ける度にディンプルキーが高い音を立てる。
いつまでも、これがある限り繋がりは切れないと思うと、切なさと愛しさに立ち止まって動けなくなる。