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蜜刻に揺れて
第6章 Ambiguous Peony
スタジオに入ってきた9secondのメンバーの中に間違いなく竜の姿があった。

静はおもわず航平の後ろに隠れた。

紳士服のポスターのそれはCMとリンクしていて、色彩の鮮やかさを表現したものだった。

スーツに身を包んだ7人の頭上から花を降らせた一瞬を切り取る。

ポスターは10種類作られ、ランダムに飾られる予定だった。

眩しく照らされるライトの下で隙間なくシャッターが切られる。

熱いそこでは花の弱り具合も酷く、静は花材の入ったバケツに氷を投入して控えた。

「あ…あの人…」

先ほど静に声をかけてきた人物が並んでいた。

西 啓介。

「セット変えますので、休憩に入りまーす」

今度は降らせるのではなく、下から花びらを跳ね上げて撮影する。

静は用意していた花びらたちを指示した。

「お疲れ様です」

耳に届いたその声に静の肩がびくっと震えた。

「お疲れ様です、この度は一緒に仕事が出来て光栄です」

隣にいた航平が対応してくれても、静は顔を上げることが出来なかった。

結局あれきりメールの一つも返信していない。

「こちらこそ、とても素敵なものになりそうで嬉しいです」

視界の端に竜の革靴の爪先が見えた。


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