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蜜刻に揺れて
第6章 Ambiguous Peony
静はぎゅっと掌を握る。

「竜、呼んでるぞ」

爪先が方向を変えて視界を外れると静は肩の荷を下ろしたように息を吐いた。

「そんなに緊張しなくても、花に話し掛けるみたいにしてくれていいよ」

「はっ、お前やめろよな、まだその癖抜けないの?」

「煩いわね」

航平に馬鹿にされて、静はそれ以上を遮る。

軽く笑い飛ばす啓介と三人で9secondのメンバーや、このポスター撮りの話に花が咲いた。

「お疲れ様です」

そこに雪夜が混ざる。

笑顔が溢れて、静の緊張も解きほぐされていく。

「竜、顔、険しい」

カメラマンに指摘されている声が静の耳に届く。

フロントマン二人だけのショットは真っ白なカサブランカを胸に抱いている。

「熱いんだもん」

「そんな顔じゃ終わるもんも終わらない、最近良いことあっただろ?」

「ない」

「んな、はっきりと…」

「俺、今メンタル、ズタズタなの」

ちらっと竜は静を捉える。

「そうなの?竜をズタボロに出来るって、よっぽどだね」

「まあね」

「相手の顔、思い出してみて?」

そう言われた一瞬で、竜の表情が変わった。

愛おしげに百合に唇を寄せた表情は妖艶で、気高く、まさに百合を抱くに相応しい人に変わっていた。

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