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蜜刻に揺れて
第7章 callupme
コツコツと音を立てて階段を2階分降りる。

自分の部屋を目指す竜の後を当たり前に着いて来たけれど、良いのだろうか。

無理矢理渡された鍵も返していない。

思い返せば今日、まともに話していない。

「か、える…ね」

エレベーターの前で足を止めてその背中に断りを入れる。

「何で?」

「遅いし…」

「朝になったら送る」

「大丈夫、タクシー摑まえるから」

エレベーターのドアが開くと、静は踵を返して乗り込んだ。

ドアは有無を言わさず閉まり、一気に下まで降りていった。

頬を掠める風が冷たくて、一瞬外へ出るのを躊躇う。

エントランスで足を止めて、エレベーターの階数表示が動くのを待ってしまう。

「大丈夫って…言ったし…」

呟いたそれは心に滲みの様に影を落とした。

移動用のカゴの中からリュウが泣く。

静はその場にしゃがみ込んでリュウを出して抱き上げた。

「リュウ…あったかい…ね…」

追いかけて来ないことが、何故かリュウを呼ぶあいりの声に重なる。

自分に重ねてたのはあいりではないだろうか。

いや、あいりだろう。

目を閉じて、リュウを呼ぶ声に耳を傾けていた横顔が…今更胸を締め付ける。
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