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蜜刻に揺れて
第8章 奥深く暗い森
「浩一郎、聞かないのか?」

「言えるのか?」

何をどう言えばいいのだろう。

嘉紀が言ったことが全てで、それ以上は均衡に関わる。

この仲間を失いたくないのは竜も同じだった。

「いつから好きだったんだよ」

「…パーティーで…一目惚れ…かな…」

「ふーん、竜がねぇ、勘違いじゃねーの?」

「はぁ?勘違いなわけねーだろ、恋心だぞ?」

「恋心っ!竜くん、じゅーんじょー」

「下半身に脳みそ直結してる浩に言われたくねー!」

「お前見たく来る者拒まずに言われたくねー!」

いつもみたく遠慮なく言い合って、最期には笑っていた。

「竜、いい男になれよ」

浩一郎はそう言い放って帰っていった。



翌日。

撥春の姿は見えなくて、スタッフもマネージャーも不安からそわそわと落ち着かなかった。

スタッフが運んできたファンレターの箱を何気なく覗き込み、ランダムに読み上げていく。

''いつも応援してます''

''夢を見させてくれてありがとう''

そんな言葉に溢れた手紙は、今の竜には重い。

今日来てくれているファンにそれ相応の人間なのだろうか。

「ホーチミン?」

一風変わったその紙を摘み上げると、それは次の運命への扉の鍵だった。

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