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フルカラーの愛で縛って
第1章 檻

休憩終了まで、残り3分。
槙野は一度手を止めて画材をイーゼルに置くと、部屋の隅に移動する。
彼女の衣服と鞄が置かれている角には、彼の私物も置いてある。
水の入ったペットボトルを持ち上げ、中身を一口飲むと、ボトルを置いた右手で2つのカメラを取り上げる。
「詩織、水を飲むかい?」
振り向けば、彼女は緩慢な動作で首を振っている。
意思疎通は問題なく出来るようだ。
満足気に笑みを浮かべた槙野は、手にしたカメラを持ってイーゼルの前に戻った。
黒くいかついポラロイドカメラはひとまず丸台に置き、小さなデジタルカメラだけ手にして詩織の座る場所へ近づく。
傍に寄れば、彼女が僅かに震えているのが見てとれた。
顔を隠すように前に降りた、肩までの柔らかい髪が揺れている。
恐らく自分が近づいてきたことにも気付いているはずだが、率先して動こうとしないところを見ると、赤い液体に飲まれかけているらしい。
槙野は彼女から1歩離れた位置へ徐ろに座り込んだ。
胡座をかき、デジタルカメラを構えると、フラッシュをたいて正面から1枚、撮影する。
「・・・」
詩織の身体がピクリと震えた。
もう1枚、角度を変えてデータに収める。
薄暗い室内が、一瞬ぱっと明るくなり、全てが照らしだされる。
槙野は、もう1枚、彼女の横顔を入れて撮影しようと身体を斜めに倒した。
その時、背後でスマートフォンが震える音が聞こえた。
「あぁ、残念だ」
何の未練もなく立ち上がると、彼は彼女の頭を片手で軽く撫でた。
「詩織、準備を」
答えを待つこともなく、彼はデジタルカメラを丸台に置くと、スマートフォンのタイマーを「15分」へ変更した。

