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フルカラーの愛で縛って
第1章 檻


3セット目は拷問だった。

敏感な箇所に塗られたローションが、詩織の身体に甘美な疼きを産み付ける。

徐々に火照る身体は、始まって数分もしないうちに熱を帯び、ポーズを保つのもやっとだ。

肌がしっとりと濡れて、仄かに赤みがかってくると、槙野に描かれた赤いラインが彼女の身体に新しいニュアンスを生み出す。

「あと10分」

槙野は彼女の身体の変化に気づきながら、時間の経過だけを伝えてくる。

余計な煽り文句も、微かな接触も一切排除して、ただ絵を描き上げることに集中している。

部屋の中は、ようやく単なるアトリエに成り下がったはずだ。

だが、中央に座る詩織だけが、異質な空気に包まれている。

薄い快楽のオブラートに包まれ、呼吸するごとに体温が上がり、意識を失う錯覚に襲われる。

(あつい)(触って)(脚の間)(舐められたい)(だめ)(ポーズを)(欲しい)

火をつけられた身体が強い刺激を求めている。

強制的に引き上げられる快楽は、もはや暴力に近い。





「時間だ」





槙野がクロッキー帳を閉じる音に、詩織は糸の切れた人形のように木製の椅子から滑り落ちた。





  *  *  *





男は床に横向きに寝転ぶ彼女を、デジタルカメラで何十枚も撮影した。

僅かばかり残った羞恥心で身体を隠そうとする表情も、隠し切れない身体のラインも、全てデータに残すと、最後に1枚だけポラロイド写真にも収める。

写真とカメラを丸台に置き、ペットボトルの水を一口飲むと、部屋のドアを開けた。

隣の部屋の襖を引いて導線を確保すると、戻ってきた彼は彼女の身体を荷物のように持ち上げた。
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