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フルカラーの愛で縛って
第2章 花
意外な言葉に彼に視線を戻せば、無邪気な笑顔を詩織に向けていた。
彼特有の満面の笑みに、何と答えたものかと逡巡した詩織に代わり、眠たそうに話を聞いていた男が小さく口を開いた。

「ワタル、お前、そこの紫陽花見て、言ってる?」
「あ、バレました?」

口を開いたのは、長めの金髪を遊ばせ、左耳に星形のシルバーピアスを嵌めた男だ。
女性の裸体がプリントされた長袖の赤いTシャツを身につけ、膝下辺りが破れたデニムを履いている。
白いTシャツに黒い袖なしニット、濃紺の(破れていない)デニムを履きこなしている望月とは、対照的な雰囲気だ。

会話の流れに、詩織はガラスの外の紫陽花を見やった。
向かいの店裏に積み上げられた黄色いビールケースの横に、紫陽花が肩を寄せあってひっそりと咲いていた。
大地の成分で色が変わるという花びらは、全盛期を過ぎているせいか真っ白に色褪せているが、灰色の壁を背にして、モノクロ写真のような佇まいがあった。

詩織が紫陽花に心奪われる間も、男達の会話は続いている。

「じゃ、庵原さんは?」
「俺? 知るかよ。俺は、そーゆーの専門外」
「えー。そんなこと言って、趣味じゃない写真とか飾られたら怒るんですよね?」
「怒らねーよ、そんな物好きじゃねーし」

庵原(いはら)と呼ばれた男が、欠伸を一つ噛み殺す。
詩織は相変わらずの2人の関係を不思議そうに眺めた。
2人ともBARでは若手の部類に入る。若手のウェイターと若手のバーテンダー。黒髪の彼がウェイターで、やる気の無さそうな彼がバーテンダーだ。
望月の接客は常に明るく穏やかで、21歳という最年少の従業員でありながら、抑えるべきところは抑える対応が魅力だ。大人の遊び場である、あの空間で、子供心を忘れずに、また隠しもせず、年配の客にも甘えたり笑いかけたりと、まるで子犬のような接客が受け入れられている。
対して庵原は、出社直後も眠そうにしているものの、ベストを着て髪をまとめると、スイッチが切り替わるタイプだ。線のような細い瞳は相変わらずだが、カウンターの状況把握は早いし、バーテンダーチームのチーフを勤める国崎の信頼も厚い。当初、彼の髪型についてはチェックも入ったらしいが、彼はバーテンダーとしての腕で先輩の助言を捻じ伏せたと聞く。
どちらにしろ、オセロの駒のように色の異なる2人だが、なぜか望月は庵原に懐いていた。
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