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フルカラーの愛で縛って
第2章 花
「そういえば、2人は今日、なんで本屋にいたの?」
「あぁ、こいつが―――」
「僕が、庵原さんを誘ったんです。こないだ、庵原さんが、家庭で出来るカクテルをお客様に紹介したいって言ってたか、っててて」
「あほ。それは黙ってていいんだよ」

会話の途中で頬をつままれて、望月が痛みに顔をしかめた。

「家庭で出来るカクテル?」
「・・・・・・」

尋ね返す詩織に、赤くなった頬を撫でる望月がちらりと庵原を伺う。
庵原は頬杖をついたまま望月に視線を向け、徐ろに顎をクイと前に突き出した。

「なにしてんだよ、早く話せよ」
「えー? 今、庵原さん、黙ってろって言ったのに」
「そりゃ、お前がポロリする前の話だろーが」
「……」

庵原の言葉に一喜一憂する望月に、詩織が思わず口元に笑みを浮かべた。 庵原の容赦無い物言いに、望月は、遠慮を放棄して盛大に溜息をつく。

「なんか、常連のお客さんに、”家でも作れるカクテルで、オススメはありますか?”って聞かれたらしいんですよ、庵原さん。でも、基本、僕らのお仕事って”オススメ”を提供する職業じゃないし、一般の人が自宅で何を作るのが簡単か良く分からないって言うから、”じゃあ、本屋にあるレシピでも見ればいいんじゃないですか?”って僕が提案したんです」

結果的に全てを暴露してから、黒髪の青年はムッとして庵原を睨んだ。

「なんでも僕に説明させるの、いい加減、卒業してくださいよ」
「いーじゃん。お前の方がエネルギー有り余ってんだから。一回り以上も上になると燃費も悪くなるんだよ。分かるか?青年」

飄々と言ってのける庵原は、望月の文句も何処吹く風だ。
思わずくすくす笑い出す詩織に、苛立ち収まらないと感じた望月が、チーズケーキを追加オーダーした。
その行動には、暢気に頬杖をついていた庵原も、流石に口元に笑みを浮かべた。
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