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フルカラーの愛で縛って
第2章 花
毎週月曜はピアノ演奏が設けられた日だ。
いつもより早いが、詩織は、そのままBARへ向かうため、2人と別れることにする。
「詩織ちゃん」
「はい?」
日頃話す機会の少ないバーテンダーの声に、立ち去ろうとした詩織が動きを止めた。
「さっきの話、国崎には黙っといて」
「え?」
「庵原さんってー、国崎さんに妙なライバル意識があるんですよ。国崎さんの方が年上だから張り合っても仕方な、っててて」
再び粛清を受ける望月に軽く目を見張るも、笑って頷く。
同じバーテンダーとして、影の努力は見せたくないのだろう。
「2人に今日会ったこと、内緒にしときますね」
「さんきゅ」
「じゃあ、僕も黙っときます」
手を振りながら引きずられていく望月(と庵原)を見送って、詩織は顔を上げた。
店に入るまで降り続いていた雨は止んでいた。
分厚い雲が立ち込めてはいるが、18時過ぎの空は仄かに明るく、夏の気配を感じさせている。
* *
Jazz Bar『Dance』は都会の歓楽街の中の一角にある。
8階建のビルの7階全体がBAR空間になっており、エレベータを降りると直接フロアに繋がっている。
壁の色は黒く、ダウンライトが店内を薄暗く照らしているものの、道路に面した片面の壁が全てガラス張りになっているため、閉塞感は感じられない。
いつもの出勤時刻より30分程早く、7階へ到着する。
フロア内、入り口から見て、やや右側にあるピアノ越しに、ウェイターの小鳥遊(たかなし)の姿が見える。男性客のオーダーを確認しているらしい。一瞬振り返った彼に軽く手を振ると、詩織は店内へ足を踏み入れた。
月曜の18:30だ。開店して30分経っているとはいえ、まだ閑散としている。
いつもより早いが、詩織は、そのままBARへ向かうため、2人と別れることにする。
「詩織ちゃん」
「はい?」
日頃話す機会の少ないバーテンダーの声に、立ち去ろうとした詩織が動きを止めた。
「さっきの話、国崎には黙っといて」
「え?」
「庵原さんってー、国崎さんに妙なライバル意識があるんですよ。国崎さんの方が年上だから張り合っても仕方な、っててて」
再び粛清を受ける望月に軽く目を見張るも、笑って頷く。
同じバーテンダーとして、影の努力は見せたくないのだろう。
「2人に今日会ったこと、内緒にしときますね」
「さんきゅ」
「じゃあ、僕も黙っときます」
手を振りながら引きずられていく望月(と庵原)を見送って、詩織は顔を上げた。
店に入るまで降り続いていた雨は止んでいた。
分厚い雲が立ち込めてはいるが、18時過ぎの空は仄かに明るく、夏の気配を感じさせている。
* *
Jazz Bar『Dance』は都会の歓楽街の中の一角にある。
8階建のビルの7階全体がBAR空間になっており、エレベータを降りると直接フロアに繋がっている。
壁の色は黒く、ダウンライトが店内を薄暗く照らしているものの、道路に面した片面の壁が全てガラス張りになっているため、閉塞感は感じられない。
いつもの出勤時刻より30分程早く、7階へ到着する。
フロア内、入り口から見て、やや右側にあるピアノ越しに、ウェイターの小鳥遊(たかなし)の姿が見える。男性客のオーダーを確認しているらしい。一瞬振り返った彼に軽く手を振ると、詩織は店内へ足を踏み入れた。
月曜の18:30だ。開店して30分経っているとはいえ、まだ閑散としている。