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フルカラーの愛で縛って
第2章 花

 *  *


国崎がカウンターから出てくることは珍しい。
だが、BARの中でトラブルが起きそうな場合は話が別だ。
それは、演奏の後に酔いが深まった客が詩織を口説くようなケースも、もちろん含まれる。

お客様を守るのも、従業員を守るのも、チーフの勤め。
決して言葉にはしないが、彼は厄介事が起きると、必ず態度でBAR全体を守ってきた。
その彼に対する全員の信頼は厚い。



国崎が声をかけると、そのお客は、はたと気づいて詩織の手を離し、紳士的に一礼した。
国崎にも「素晴らしいBARに来れて幸せだ」と賛辞を述べて、自分の席へ戻っていく。
その姿を微笑んで見送り、国崎が詩織の耳元に唇を寄せた。

「お気をつけて、姫君」
「ありがと、私の王子様」

一瞬の囁きで言葉を交わすと、二人は互いの居場所へ戻っていく。



カウンターに戻った国崎に、佐々木が「平気か?」と声をかけた。
その視線は、詩織が立ち去った"STAFF ONLY"の扉の向こうを見つめている。
国崎も、真剣な顔つきで、同じ場所を一瞥し頷いた。

「多分な。……うちの"サクラ"に悪い虫がつかないように、俺達も気をつけないと」

後半は軽口めいて返せば、国崎は再び口元に笑みを浮かべ、近寄ってきた小鳥遊のオーダーに耳を傾けた。

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