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フルカラーの愛で縛って
第3章 絵
* * *
ソファから毛足の長いラグに転がり落ちていた詩織が、ようやく重い身体を腕の力で起こそうとした時、マグカップに紅茶を入れた槙野が詩織の元へ、ゆっくりと歩いてきた。
彼は、先程までの激情が嘘のように、既に洗いたてのシャツを来て、デニムを身に纏っていた。
ローテーブルを引き寄せて紅茶のカップを置くと、男は手にしていた真っ白いバスローブを広げる。立ち上がろうとする詩織に手を貸してバスローブを着せると、精液と愛液で汚れたソファに、そのまま詩織を腰掛けさせた。
自分は、そんな彼女を立ったまま見下ろし、はだけた合わせから覗く、美しい右胸の膨らみと太腿の白さ、コントラストを生み出す脚の付け根の茂みを眺めている。
暫くたって、男は、単純な話をした。
『画集を書き終えた。その画集は、既にフランスとイタリア、スペインで発刊が決まっている。だが、自分が今、興味があるのは、これまで撮影してきた詩織の写真だ。その写真に絵を重ねて描き、写真と絵を融合した作品集を創ろうと思っている。既に、国内のいくつかの出版社が、この企画に賛同の意を示している。だから、詩織にもモデルとして協力してもらいたい』
そんな内容だった。
話を聞きながら、詩織は無言でバスローブの前を合わせ俯いた。
少し考えてから、詩織は、男の話を受け入れた。
男の話を受け入れてから、代わりに、この関係の幕切れを提示した。
槙野に出会ってから、6年以上が経っていた。
今から1年半ほど前、彼女が29歳の時のことだった。