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フルカラーの愛で縛って
第5章 炎
* * *
今宵2度目の吸い殻の廃棄に地上へ降りた庵原は、裏手に男が居なくなっていることを確認してから、まず持ってきたバケツの吸い殻を廃棄した。
その手で、燃えカスの入ったバケツを手にとり、中身を確認する。燃え尽きて暫く立っているように見えたバケツは、まだ幾らか温もりが残っていた。一度立ち上がって自販機横の空き缶を持ってくれば、その空き缶で、バケツの中を掘るように漁った。
火は消え、大概の写真は燃えたようだ。底には黒い灰が沈殿している。
あの、自称・画家の男が、詩織に何をして、どんな契約を強要したのかは知らないが、こんな写真は全て燃えて消える方がいい。
廃棄場に中身を捨てようと立ち上がった庵原の目に、燃え残ったポラロイド写真の白い帯部分が映った。そこには黒いマジックで、3年前の春の日付が書き込まれていた。
(3年前・・・)
バケツの中身を捨てながら、ビルの最上階で自分を待っているであろう女を思う。
少なくとも3年以上前から、詩織は、あの男と何らかの関係があったのだ。
何故だ―――。
悲しげな瞳を瞼の裏に隠してから、庵原は2つのバケツを空にすると、ビルのエレベータに戻り、BARのクローズ作業の続きに取り掛かった。