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フルカラーの愛で縛って
第5章 炎


  *  *  *


庵原の家は、薄給なバーテンダーとしては意外なほど、十分な広さがあった。
駅から8分ほどのマンションだったが、5階の彼の部屋は、玄関前の廊下を曲がって、8畳のダイニングキッチンと6畳の居間、その居間に隣り合って4畳の寝室があり、バス・トイレも別だった。独り身が暮らす家というよりも、男女が同棲するのにふさわしいような、そんなゆとりのある空間だった。


自宅に詩織を招いた庵原は、自分のスエットを彼女に貸して、シャワーを浴びるか尋ねた。
首を振る彼女に「じゃ、身体拭く?」と濡らしたタオルを渡してから、自分は簡単にシャワーを浴びる。
濡れた髪を拭きながら戻った庵原は、居間のソファで借りてきた猫のように身体を丸め、体育座りをしている詩織に苦笑した。あの写真を見る限り、相当、男慣れしているようにも思える彼女だったが、そんな詩織が身を縮こまらせている様子は、不思議と庵原に安心感を与えた。
身体を拭いたかは分からないが、顔はぬぐったらしい。化粧の取れた彼女の顔は、いつもより幾らか幼く見えた。


冷蔵庫を開けて、いつもの癖で缶ビールを取り出そうとして、ふと動きを止めると、庵原は上半身に濡れた水をまとわりつかせたままのトランクス1枚の格好で、詩織の傍にやってきた。
「詩織ちゃん、ベッド貸すから。今日は、もう寝たほうがいい」
「あ、……でも」
顔を上げた詩織は、庵原の腹筋と濡れた胸元に思わず顔を逸らしながら、遠慮がちな声を漏らす。
「でも、何? 眠れないから、ここで一晩、俺と人生について語り明かす? 俺、バーテンだけど、流石に一晩語り尽くせるほど、ネタ無いよ?」
金髪の先端から垂れる雫を肩にかけたバスタオルで拭いながら、庵原が緩く笑う。
詩織も、彼の言葉に小さく微笑むと、少ししてから「うん」と頷いた。


リビングと扉一枚隔てた寝室で、ベッドに潜り込む詩織に、庵原が扉から首だけ出して声をかける。
「少なくともここは安全だから、ゆっくり寝ていいよ」
「ありがと、庵原さん」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
庵原が電気を消して扉を締めたのを確認し、詩織は羽のように軽い羽毛布団の中で身体を丸めた。
この部屋のエアコンディショナーは快適だ。
心地よい空気の温湿に、詩織は目を閉じて深く息を吐いた。

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