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フルカラーの愛で縛って
第6章 命
ソファの中央に腰を降ろし、庵原は両手を背もたれに置いて天井を見上げた。
後頭部を背後の座面に預け、白い天井を見つめたまま、微かに唇を開く。
「死んだんだな、あいつ」
小さな声は、返って静けさの濃度を深めた気がした。
暫く、2人は動かずに、ぼんやりとしていた。
そのうち、詩織が、泣きそうな顔で庵原を見上げた。
動きに釣られるように詩織に顔を向けてから、庵原は彼女を胸の中に抱き寄せた。
右腕の中に包み込み、左手を彼女の肩に回すと、大きな掌で、ゆっくり背中を撫でる。
詩織は泣いていなかった。
全ての涙を流し尽くしたように、瞳からは一粒の雫も溢れなかった。
その彼女の様子を見て、庵原の方が沈痛な面持ちで唇を噛んだ。言いようのない、もどかしい気持ちは、胸の奥を万力で締められているようだった。
「庵原さん」
「ん?」
「抱いて」
詩織の言葉に、庵原の胸が、また一際強く痛んだ。
腕の中で、暗い悲しみに揺れる女の声に、庵原は苦しげに眉を寄せた。
「自分を…、大事にした方がいい」
その言葉に、詩織が庵原の腕の中でそっと顔を上げた。
絡み合う視線に、庵原の目が細くなる。
感情が滲みにくい男の瞳を見つめ、詩織は首を僅かに横に振った。
「違うの」
「私、もう、あの人を忘れたいんです…」
自分の腕に触れている詩織の指が、小刻みに震えている。
「お願い。あの人の記憶を、消して―――」
庵原さん、という詩織の声は言葉にならなかった。
自分を見上げる詩織の瞳が潤んだと気付いた時には、庵原は詩織の唇に自分の唇を深く重ねていた。
後頭部を背後の座面に預け、白い天井を見つめたまま、微かに唇を開く。
「死んだんだな、あいつ」
小さな声は、返って静けさの濃度を深めた気がした。
暫く、2人は動かずに、ぼんやりとしていた。
そのうち、詩織が、泣きそうな顔で庵原を見上げた。
動きに釣られるように詩織に顔を向けてから、庵原は彼女を胸の中に抱き寄せた。
右腕の中に包み込み、左手を彼女の肩に回すと、大きな掌で、ゆっくり背中を撫でる。
詩織は泣いていなかった。
全ての涙を流し尽くしたように、瞳からは一粒の雫も溢れなかった。
その彼女の様子を見て、庵原の方が沈痛な面持ちで唇を噛んだ。言いようのない、もどかしい気持ちは、胸の奥を万力で締められているようだった。
「庵原さん」
「ん?」
「抱いて」
詩織の言葉に、庵原の胸が、また一際強く痛んだ。
腕の中で、暗い悲しみに揺れる女の声に、庵原は苦しげに眉を寄せた。
「自分を…、大事にした方がいい」
その言葉に、詩織が庵原の腕の中でそっと顔を上げた。
絡み合う視線に、庵原の目が細くなる。
感情が滲みにくい男の瞳を見つめ、詩織は首を僅かに横に振った。
「違うの」
「私、もう、あの人を忘れたいんです…」
自分の腕に触れている詩織の指が、小刻みに震えている。
「お願い。あの人の記憶を、消して―――」
庵原さん、という詩織の声は言葉にならなかった。
自分を見上げる詩織の瞳が潤んだと気付いた時には、庵原は詩織の唇に自分の唇を深く重ねていた。