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フルカラーの愛で縛って
第6章 命

5階の部屋の前で鍵を取り出してから、ふと思いついてドアに手をかけてみた。
(あ・・・)
時折、庵原が玄関に施錠しない日があることに、詩織は気付いていた。
こんな日は、きっと彼も、自分のことを思い出しているに違いない。
握ったままの鍵を薄手のコートのポケットにしまって、彼女は玄関の扉を開けた。
「ただいま」
「おかえり」
キッチンでハヤシライスを作っている庵原の後ろを抜けて、詩織はリビングのソファに脱いだコートをかけると、鞄を抱えながら座面へ座った。
肩掛け鞄の紐を外し、ソファの端に置いた、その目が、ローテーブルの上の白い本に吸い寄せられて、止まった。
テーブルには『あだばな』と明朝体で書かれた写真集が置かれていた。
以前、本屋で見かけた時には、思わず持っていたものを落とし、背後さえ確認せずに後ずさって、庵原と望月にぶつかった。あの、本だ。
真っ白い表紙の、中央やや上には、黒い四角いキャンバス、その中に淡く微笑む白黒の詩織が写っている。
その構図は、まるでポラロイド写真のようだった。
どこか幻想的に感じるのは、恐らく、詩織の左目と鎖骨にとまる、鮮やかな赤い蝶のせいだ。
ずっと見ないようにしてきた、彼の作品に、何故か、迷いなく右手が伸びた。
(あ・・・)
時折、庵原が玄関に施錠しない日があることに、詩織は気付いていた。
こんな日は、きっと彼も、自分のことを思い出しているに違いない。
握ったままの鍵を薄手のコートのポケットにしまって、彼女は玄関の扉を開けた。
「ただいま」
「おかえり」
キッチンでハヤシライスを作っている庵原の後ろを抜けて、詩織はリビングのソファに脱いだコートをかけると、鞄を抱えながら座面へ座った。
肩掛け鞄の紐を外し、ソファの端に置いた、その目が、ローテーブルの上の白い本に吸い寄せられて、止まった。
テーブルには『あだばな』と明朝体で書かれた写真集が置かれていた。
以前、本屋で見かけた時には、思わず持っていたものを落とし、背後さえ確認せずに後ずさって、庵原と望月にぶつかった。あの、本だ。
真っ白い表紙の、中央やや上には、黒い四角いキャンバス、その中に淡く微笑む白黒の詩織が写っている。
その構図は、まるでポラロイド写真のようだった。
どこか幻想的に感じるのは、恐らく、詩織の左目と鎖骨にとまる、鮮やかな赤い蝶のせいだ。
ずっと見ないようにしてきた、彼の作品に、何故か、迷いなく右手が伸びた。

