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フルカラーの愛で縛って
第6章 命
白く重厚な装丁の本は、見た目の印象とは裏腹に、それほど重くなく、膝の上に置くと、詩織の手の中に、しっくりと収まった。

いつの間にか、庵原がソファ越しに背後に立っている。

彼は、背もたれに両手を置いて、ただ静かに、詩織の手元を覗きこんでいた。

無言のまま、詩織は表紙をめくった。

そこには、"アゲハ"と名付けられた詩織の姿が収められていた。

一つ一つのフレームの中で、蝶が舞い上がり、時には桜の花びらと共に在り、あるいは鳥かごの中で不安げに空を見上げている姿も描かれていた。

"アゲハ"は生き生きと動き、泣き、微笑み、感じて、呼吸をしていた。

あの倒錯的で淫蕩な時間が嘘のように、作品の中の彼女は、美しく清廉で、どこか儚げでもあり、艷やかだった。

ただ、紙を捲る微かな音だけが、部屋に響く。

ゆっくり写真をめくっていた詩織の手が、最後の写真で、思わず震えた。

それまでの作品は、モノトーンの写真に、様々な色の装飾が描かれていたが、最後の一枚だけは、フルカラーだった。

真っ黒い一面の漆黒を背景に、赤いラインを手首や太腿にまとった彼女の裸体が横向きに寝転んでいる。

その肌色の背中には、大きな羽が描かれていた。

赤い羽だ。

羽の模様の中には、僅かに他の色も混じり合い、背後の闇が透けて見え、羽の薄さが伺える。

まるで羽化したばかりの命のような、濡れた羽を大きく開く直前のような、そんな幻想的で躍動的な1枚だ。

"アゲハ"は、混じりけの無い清らかな色を瞳に浮かべ、不思議に幸せそうな顔をしていた。

(・・・・・・)

写真に魅入られ動きを止めた詩織に、背後の庵原が静かに口を開く。

「その写真、俺もいいと思った」

言葉も無く頷いた彼女は、その写真を指先で、そっと撫でた。

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