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フルカラーの愛で縛って
第6章 命
生まれたてのアゲハチョウを、愛おしむように触れてから、ふと、その次に白いページがあることに気付き、ページをめくる。
そこには、『最愛なるアゲハへ』という文章が掲載されていた。
少し読んでから、詩織は本を閉じて胸に抱きしめた。
その様子に、庵原が上体を曲げて、詩織を後ろから両手で包み込む。
「いいの? 読まなくて」
「うん…。もう、伝わってるから」
答えた詩織の肩が僅かに震えた。
鼻をすすった彼女の身体を強く抱きしめて、庵原は「そっか」とだけ呟いた。
3日後、詩織は、引っ越しを決めた。
不動産屋の前で、防音室あり物件を探す、2人の男女の姿があった。