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曖昧なままに
第10章 密かに去って
 その日より――愛美が俺の前に、その姿を見せることはなくなっていた。メールにも電話にも、応じることはなく。財布を置き去りにしたままに……。

 そのまま二週間近くが経過し、その頃の俺は――。

    ※    ※


「あ……うう……あんっ、もっと――」


 とあるラブホテルの一室。奈央の声が、徐々にその音量を増す。

 広いベッドの上。四つん這いになる奈央の背後より、俺は腰を振り己を突き立てていた。その度に、たぷんたぷんとリズミカルに揺れる大きな胸。

 奈央の反り返りし、滑らかな背中のライン。その延長の丸い尻を掴み、興奮の高まりに合わせ俺の動きは激しさを増す。

「ああ、あ、あっ、ああんっ――いいっ!」

 ぎゅっと掴んだシーツに集まる皺。快感に耐え兼ねたように、奈央は顔をベッドに埋める。しかし俺を求め続けて、その尻のみを高く突き出す。

 飛び散る程に、ぐっしょりと濡れた二人の結合部。それとは裏腹に、腰をぶつけた尻の頬が、パンパンパンと乾いた音を鳴らした。

「あああっ――わ、私、ぃい――また、ああんっ!」

「ああ……こっち、も……」

「いっ……一緒に――ね、えっ!」

 互いの訪れを口にして、俺も奈央も只――その頂を目指す。

 しなやかな身体を潰してしまう程に、俺は怒張を強く深く押し込んで行く。

 そして、最後の一撃を奈央に加えて――

「はぁあんっ――」

 そのまま背中に圧し掛かると、豊満な胸を絞り上げるように両手に掴んだ。

「あぁあああ……!」

「くぅ……!」


 ビクッ、ビクッ、ビクッ――。


 奈央の到達を間近に実感し――俺もその中に昂りの全てを吐き出す。

 はあ、はあ、はあ……。

 しばし身体を折り重ね、行為の余韻に浸っている二人――。

 先にそこから脱した俺は、まだ膨張を残す自身をすぽっと抜き去った。

「あぁん……」

 その拍子に漏れる、色っぽい奈央の声。

 突き出したままの尻を、ピクピクさせつつ。交わり濡らし尽くした秘所は、帯びた熱を昇華させているかの如く、パックリと口を開いたまま。

 あられもない姿を晒して、それでもまだ動けない奈央。それを見越した上で、その姿をじっくりと眺めつつ俺は言う。

「いい景色だ」

「バカ……意地悪……」

 そう言って横目で睨む奈央の顔が、俺にはとても可愛く思えていた。
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