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曖昧なままに
第13章 忌むべき過去(愛美の独白)
「愛美ちゃん。朝御飯、ここに置いておくよ」
午前十時。部屋の外から、そんな声が聴こえた。それは何時ものこと。柴崎さんは用意した朝食を私の部屋の前に置き、それから何処かへと出かけて行く。
しかし、その日は様子が違っていた。部屋の前から、彼が立ち去る気配がない。そして暫くすると、また声が聴こえた。
「今日はおじさん、仕事が休みでさ。だから暇なんだ。よかったら、一緒に遊んでくれないかなぁ」
「……」
私が取り合わないのも構わずに、柴崎さんは一人で話し続ける。
「あ、そうだ。ゲームでもしようか。愛美ちゃん、持ってるんだろ? おじさんに教えてくれよ。それとも……そうそう、アニメでも観よっか。好きなんだよねよね、アニメが。おじさんだって、少しは知ってるぞ。ホラ、何て言ったっけな? ロボットが勝手に暴れ出しちゃうやつ。ハハハ……古いかな。後は、そうだなぁ――」
まるで止もうとしない言葉。それに根負けするように――。
カチャ――。私は部屋のドアを開いていた。
「お、出て来たな。久しぶりだね、ってもの変か」
部屋の前で胡坐をかき、私を見上げて柴崎さんが笑う。
ドキッ――と、その笑顔に敏感に反応する私の胸の高鳴り。でも――
「で――何して遊ぶ?」
そう問われた時、私は急に腹立たしくなった。
「遊びません。あんまり、子ども扱いしないで!」
そう言い放った勢いにまま、ドアを閉めようとする。
けれどその時、大きな手がガッとドアの隙間に割って入った。
「は、放してっ!」
柴崎さんの右手が、ドアの端を掴み。私が両手でドアノブを引いても、まるでビクともしない。大人の男の力を、私は初めて実感していた。
そして柴崎さんの顔から笑顔が消え、そして低い声で説く。
「愛美ちゃん……部屋に逃げてちゃ駄目だ。学校にも行った方がいい。じゃないと、必ず後悔する。おじさんが、そうだったようにね……」
「そんな、お説教――聞きたくないっ!」
――ギチィ!
私が全力でドアを閉めようとした時。急に力がふっと抜けて、直後に伝わる嫌な感触。
「あっ!」
柴崎さんの手を、ドアに挟み込み。驚いて声を上げると、私は咄嗟にドアノブを放す。
その反動でドアが、ギィっと音を立て開き――
「イタタ……」
右手を抑えて蹲る、柴崎さんの姿が……そこに。
午前十時。部屋の外から、そんな声が聴こえた。それは何時ものこと。柴崎さんは用意した朝食を私の部屋の前に置き、それから何処かへと出かけて行く。
しかし、その日は様子が違っていた。部屋の前から、彼が立ち去る気配がない。そして暫くすると、また声が聴こえた。
「今日はおじさん、仕事が休みでさ。だから暇なんだ。よかったら、一緒に遊んでくれないかなぁ」
「……」
私が取り合わないのも構わずに、柴崎さんは一人で話し続ける。
「あ、そうだ。ゲームでもしようか。愛美ちゃん、持ってるんだろ? おじさんに教えてくれよ。それとも……そうそう、アニメでも観よっか。好きなんだよねよね、アニメが。おじさんだって、少しは知ってるぞ。ホラ、何て言ったっけな? ロボットが勝手に暴れ出しちゃうやつ。ハハハ……古いかな。後は、そうだなぁ――」
まるで止もうとしない言葉。それに根負けするように――。
カチャ――。私は部屋のドアを開いていた。
「お、出て来たな。久しぶりだね、ってもの変か」
部屋の前で胡坐をかき、私を見上げて柴崎さんが笑う。
ドキッ――と、その笑顔に敏感に反応する私の胸の高鳴り。でも――
「で――何して遊ぶ?」
そう問われた時、私は急に腹立たしくなった。
「遊びません。あんまり、子ども扱いしないで!」
そう言い放った勢いにまま、ドアを閉めようとする。
けれどその時、大きな手がガッとドアの隙間に割って入った。
「は、放してっ!」
柴崎さんの右手が、ドアの端を掴み。私が両手でドアノブを引いても、まるでビクともしない。大人の男の力を、私は初めて実感していた。
そして柴崎さんの顔から笑顔が消え、そして低い声で説く。
「愛美ちゃん……部屋に逃げてちゃ駄目だ。学校にも行った方がいい。じゃないと、必ず後悔する。おじさんが、そうだったようにね……」
「そんな、お説教――聞きたくないっ!」
――ギチィ!
私が全力でドアを閉めようとした時。急に力がふっと抜けて、直後に伝わる嫌な感触。
「あっ!」
柴崎さんの手を、ドアに挟み込み。驚いて声を上げると、私は咄嗟にドアノブを放す。
その反動でドアが、ギィっと音を立て開き――
「イタタ……」
右手を抑えて蹲る、柴崎さんの姿が……そこに。