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曖昧なままに
第2章 単なる男女
ヒールの高いブーツにより、綺麗なメイクを施された愛美の顔はいつもより近くに感じた。その顔が、にっこりとした微笑を浮かべるのを見て。俺の鼓動は、年甲斐もなく一気に早まろうとしていた。
「じゃあ……行こうか」
「はい」
助手席に愛美を乗せて、車を走らせる俺。ハンドルを握る手にも幾分の緊張が伝わる。ふと愛美をチラリと見る。不意にぶつかった視線に驚き、俺は咄嗟に前に向き直った。
イブであるこの夜に、いつもと違う愛美を前にしている。それが俺の期待を否応なく、膨らませようとしていた。
もしかしたら……前に進めるのかもしれない。
そんな想いを秘めた俺に、この聖夜は何をもたらそうとしているのだろうか?
※ ※
予約したレストランで、俺は愛美と顔を向き合せて食事する。
間接照明に照らされた愛美は、まるで別人のようだった。いつもの化粧気の少ない表情も可愛らしくは思うが、今夜は何と言うか大人の女性の美しさも兼ね備えて見える。
メイクや服装、そして店の雰囲気等も手伝い、その魅力を引き出されているかのようだ。
何処か戸惑い何処か高鳴るものを覚えながら、それでもこの時間を俺は愉しんでいたのだと思う。
「あの、コレ――」
料理も進みデザートが運ばれた時だった。愛美はそう言って、自分のバッグから何かを取り出す。
それを見た瞬間、俺は心の中で「しまった」と叫んでいた。
「一応、プレゼントです。大したものじゃありませんけど……」
可愛らしくラッピングされた小箱。愛美は俯き加減に静々と、それを差し出していた。
「あ、ありがとう。でも、ごめん。俺……プレゼント用意してなくて」
プレゼントを用意するか否か、俺は直前まで迷っていた。そうしなかったのは、結局は今の関係を考慮した末。あざとい真似のように思え、変に下心が見え隠れするのを恐れたのだ。愛美がプレゼントを用意するはずがない、という思い込みからの判断である。
だがこうなってしまえば、それは単なる言い訳。俺は頭を掻きながら、とてもバツの悪い気分に苛まれていた。
「あ、いいんです。いつもご馳走になっている、ほんのお礼の気持ちですから」
その言葉と彼女の気遣いに、俺は何とか救われた気分である。
「じゃあ……行こうか」
「はい」
助手席に愛美を乗せて、車を走らせる俺。ハンドルを握る手にも幾分の緊張が伝わる。ふと愛美をチラリと見る。不意にぶつかった視線に驚き、俺は咄嗟に前に向き直った。
イブであるこの夜に、いつもと違う愛美を前にしている。それが俺の期待を否応なく、膨らませようとしていた。
もしかしたら……前に進めるのかもしれない。
そんな想いを秘めた俺に、この聖夜は何をもたらそうとしているのだろうか?
※ ※
予約したレストランで、俺は愛美と顔を向き合せて食事する。
間接照明に照らされた愛美は、まるで別人のようだった。いつもの化粧気の少ない表情も可愛らしくは思うが、今夜は何と言うか大人の女性の美しさも兼ね備えて見える。
メイクや服装、そして店の雰囲気等も手伝い、その魅力を引き出されているかのようだ。
何処か戸惑い何処か高鳴るものを覚えながら、それでもこの時間を俺は愉しんでいたのだと思う。
「あの、コレ――」
料理も進みデザートが運ばれた時だった。愛美はそう言って、自分のバッグから何かを取り出す。
それを見た瞬間、俺は心の中で「しまった」と叫んでいた。
「一応、プレゼントです。大したものじゃありませんけど……」
可愛らしくラッピングされた小箱。愛美は俯き加減に静々と、それを差し出していた。
「あ、ありがとう。でも、ごめん。俺……プレゼント用意してなくて」
プレゼントを用意するか否か、俺は直前まで迷っていた。そうしなかったのは、結局は今の関係を考慮した末。あざとい真似のように思え、変に下心が見え隠れするのを恐れたのだ。愛美がプレゼントを用意するはずがない、という思い込みからの判断である。
だがこうなってしまえば、それは単なる言い訳。俺は頭を掻きながら、とてもバツの悪い気分に苛まれていた。
「あ、いいんです。いつもご馳走になっている、ほんのお礼の気持ちですから」
その言葉と彼女の気遣いに、俺は何とか救われた気分である。