この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
曖昧なままに
第2章 単なる男女
 ヒールの高いブーツにより、綺麗なメイクを施された愛美の顔はいつもより近くに感じた。その顔が、にっこりとした微笑を浮かべるのを見て。俺の鼓動は、年甲斐もなく一気に早まろうとしていた。

「じゃあ……行こうか」

「はい」

 助手席に愛美を乗せて、車を走らせる俺。ハンドルを握る手にも幾分の緊張が伝わる。ふと愛美をチラリと見る。不意にぶつかった視線に驚き、俺は咄嗟に前に向き直った。

 イブであるこの夜に、いつもと違う愛美を前にしている。それが俺の期待を否応なく、膨らませようとしていた。

 もしかしたら……前に進めるのかもしれない。

 そんな想いを秘めた俺に、この聖夜は何をもたらそうとしているのだろうか?

    ※    ※

 予約したレストランで、俺は愛美と顔を向き合せて食事する。

 間接照明に照らされた愛美は、まるで別人のようだった。いつもの化粧気の少ない表情も可愛らしくは思うが、今夜は何と言うか大人の女性の美しさも兼ね備えて見える。

 メイクや服装、そして店の雰囲気等も手伝い、その魅力を引き出されているかのようだ。

 何処か戸惑い何処か高鳴るものを覚えながら、それでもこの時間を俺は愉しんでいたのだと思う。

「あの、コレ――」

 料理も進みデザートが運ばれた時だった。愛美はそう言って、自分のバッグから何かを取り出す。

 それを見た瞬間、俺は心の中で「しまった」と叫んでいた。

「一応、プレゼントです。大したものじゃありませんけど……」

 可愛らしくラッピングされた小箱。愛美は俯き加減に静々と、それを差し出していた。

「あ、ありがとう。でも、ごめん。俺……プレゼント用意してなくて」

 プレゼントを用意するか否か、俺は直前まで迷っていた。そうしなかったのは、結局は今の関係を考慮した末。あざとい真似のように思え、変に下心が見え隠れするのを恐れたのだ。愛美がプレゼントを用意するはずがない、という思い込みからの判断である。

 だがこうなってしまえば、それは単なる言い訳。俺は頭を掻きながら、とてもバツの悪い気分に苛まれていた。

「あ、いいんです。いつもご馳走になっている、ほんのお礼の気持ちですから」

 その言葉と彼女の気遣いに、俺は何とか救われた気分である。
/177ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ