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第15章 唯、興じて

「あぅん、あ、あ、あ、ああっ――ん、んんっ」

　掴んでくしゃくしゃにしたシーツに顔を埋めて、愛美は俺の愛撫に感じてくれている。

　その声を聴き更に、遮二無二――。びちゃりと鼻先までを濡らして、俺は愛美の園にむしゃぶりついていた。

「……」

　興奮に任せそこに舌を這わせなはらも、不意に俺は不思議な感覚を得る。高まり続ける本能に反比例するように、その思考は何処か客観的に二人の行為を捉えていた。

　今まさに、俺が口で愛でている坩堝。その奥中に己自身を突き立ててしまえば、愛美との情交は果たされるのだろう。

　だが本当に、それだけでいいのか？

　それだけのことで、彼女は救われるというのか？

　ふとそんな疑問が浮かぶと、俺は頭からそれを振り払おうとした。難しく考えてはならない。雑念に気を裂いているようでは、また以前のように……。

　集中しようとの、想いに反するように――


『そうじゃなくて……ごめんなさい。私……わからなくなって』

『――それで最期です』

『覚悟は、できたの？』

『私のものとなり――その最期を迎える』


　脳裏には、それまでの愛美の言葉が、次々に廻ってゆく。そして――


『シバ……ザキ……さん』


　その名を口にして、豹変したその姿をも――。

　考えるなと強く思う程に、どうしようもなく支配されようとする――俺の思考。　


　その時に、愛美はどうなり――

　その時に、俺はどうなるのか。


「くっ……」


　否――どうにもなりは、しない！


　俺だって相応の覚悟を以て、此処に居たっている。その為に俺は……。

　だから愛美も――そんな俺を、受け入れようとしている筈だ。

　だったら後は――男として女を貫くだけ。

「……」

　俺は顔を愛美の尻から放し、上体をゆっくりと起こした。

　視線を落とすと、自信の膨張が持続していることを確認。

　そして、それを右手で握りると――

　既にしっとりと潤った、愛美の孔へと導く。

　俺はそのまま背後から、彼女の最中に臨もうとしていた。そして――


　くちゅ――。


　ついにその先端が、妖艶な襞に触れる。

　その感触が俺の全身の隅々まで、ぞわっと駆け巡った。

　そうなればもう、躊躇することさえないできはしない。


　ぐっ……。


　後は欲望を――その奥へと――。