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曖昧なままに
第15章 唯、興じて
「……ん」
窓から差し込む陽射しにより、俺が目覚めたのはもう朝方だった。
どうやら俺は力尽きるように倒れ、そのまま眠ってしまったらしい。
「――!」
俺は服を着せられ、身体には薄い毛布を掛けられていて――。
しかし、ガランと寂しげなその部屋は、既に愛美が去った後であることを、暗に俺に報せている。
「そっか……」
宿主の居ない室内を見回して、ふっとため息をついた時――。
俺の背後より、その声は聴こえていた。
「なんか、残念そうね……」
「――!?」
ハッとして振り向き、そこに鎮座する姿を見て俺は驚愕する。
「奈央……」
「悪かったわね。私で――」
奈央はそう言って、ぷくっとその頬を膨らませた。
「な、何で……ここに?」
「何でって……電話があったの」
「電話って……誰から?」
「誰って……あの娘――遠藤さんからっ!」
「え……?」
奈央は怒りながらも、その事情を俺に話して聞かせる。
それは奈央が自分の部屋で、俺を待ち続けていた時。その夜半に俺からの着信を認め、奈央はその電話に応じたということ。だが当然、その通話相手は俺ではなく――
『私――遠藤と申します』
電話の向こうから聴こえたのは、そんな響きであったという。
当然ながら、奈央としても想う処は様々あったようで……。その会話の内容について、彼女は多くを語ろうとはしていない。
だが、愛美が最後に告げた言葉。それを奈央は教えてくれた。
『何かを頼める道理なんて、私にはありません。でも……洋人さんが貴女を、呼んでいますから……』
愛美はそう奈央に伝え、通話を終わらせていた――らしい。