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曖昧なままに
第3章 白くない聖夜
クロスさせた両腕で顔を隠すようにしながら、愛美は泣き始めていた。
「あの……さ?」
その姿を見せられ、俺は困惑の渦中へ。まだ俺の両手は、下着の両端を掴んだまま――。
彼女に有無を言わさず、行為に走ることも難しくなかった。と言うよりも、そうしてしまいたい願望が、まだ俺の中に強く残されている。しかし――
「……」
ベッドに乱れた髪。白い肌を晒しつつ、顔をのみ隠しているその姿。そして、彼女の啜り泣く声。
それらが俺に、ストップをかけた。
このまま欲望だけを果たしたとしても、何も残りはしない。否、その後味の苦さを俺は知っていたのだ。それは求めていたものとは、全く似つかわしくない想いである。
俺は愛美の下着から手を放し、ベッドの脇に腰掛けた。
「……?」
それに気づいた愛美は、俺に視線を送る。その顔を見て――
「もう、止めよう。無理は良くない」
優しく微笑んだつもりだが、それは苦笑だったかもしれない。とにかく俺は、愛美にそのように告げた。
すると愛美は、慌てたようにベッドから起き上がる。
「ごめんなさい。私、洋人さんが嫌とかではなくて。だけど……」
「――?」
「昔のことを思い出して……そうしたら、急に……」
「何か嫌な経験がある……とか?」
「そ、それは……」
愛美は、そのまま俯き口籠ってしまう。そしてバスタオルで胸元を覆うと、黙って俺の横に座った。
「……」
「……」
長い沈黙が続く――。
過去に何かがあったことは、間違いないらしい。それは彼女が恋愛をしてこなかったことと、無関係ではないのだろう。しかしそれを、俺に話す気配はなかった。
沈黙に耐えかね――
「今夜は、もう帰ろう」
俺はそう告げて、ベッドから立ち上がる。
するとその時に、不意に俺の手を愛美が掴んだ。
「!」
俺は何事かと思い、腰掛けたままの彼女を振り向く。
「しらけさせてしまって、すみません。せめて、そのお詫びに――」
最初は何を言い出したのか、わからなかった。
その言葉の意味は、愛美の自らの行動で示されようとしている。
「な……?」
愛美は無造作に、俺の腰からバスタオルを取り払った。
そして顕わとされた、俺の股間を――
「……」
感情の読めない眼差しを以て、じっと一心に愛美が見つめている。
「あの……さ?」
その姿を見せられ、俺は困惑の渦中へ。まだ俺の両手は、下着の両端を掴んだまま――。
彼女に有無を言わさず、行為に走ることも難しくなかった。と言うよりも、そうしてしまいたい願望が、まだ俺の中に強く残されている。しかし――
「……」
ベッドに乱れた髪。白い肌を晒しつつ、顔をのみ隠しているその姿。そして、彼女の啜り泣く声。
それらが俺に、ストップをかけた。
このまま欲望だけを果たしたとしても、何も残りはしない。否、その後味の苦さを俺は知っていたのだ。それは求めていたものとは、全く似つかわしくない想いである。
俺は愛美の下着から手を放し、ベッドの脇に腰掛けた。
「……?」
それに気づいた愛美は、俺に視線を送る。その顔を見て――
「もう、止めよう。無理は良くない」
優しく微笑んだつもりだが、それは苦笑だったかもしれない。とにかく俺は、愛美にそのように告げた。
すると愛美は、慌てたようにベッドから起き上がる。
「ごめんなさい。私、洋人さんが嫌とかではなくて。だけど……」
「――?」
「昔のことを思い出して……そうしたら、急に……」
「何か嫌な経験がある……とか?」
「そ、それは……」
愛美は、そのまま俯き口籠ってしまう。そしてバスタオルで胸元を覆うと、黙って俺の横に座った。
「……」
「……」
長い沈黙が続く――。
過去に何かがあったことは、間違いないらしい。それは彼女が恋愛をしてこなかったことと、無関係ではないのだろう。しかしそれを、俺に話す気配はなかった。
沈黙に耐えかね――
「今夜は、もう帰ろう」
俺はそう告げて、ベッドから立ち上がる。
するとその時に、不意に俺の手を愛美が掴んだ。
「!」
俺は何事かと思い、腰掛けたままの彼女を振り向く。
「しらけさせてしまって、すみません。せめて、そのお詫びに――」
最初は何を言い出したのか、わからなかった。
その言葉の意味は、愛美の自らの行動で示されようとしている。
「な……?」
愛美は無造作に、俺の腰からバスタオルを取り払った。
そして顕わとされた、俺の股間を――
「……」
感情の読めない眼差しを以て、じっと一心に愛美が見つめている。