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曖昧なままに
第3章 白くない聖夜
 その時の愛美の――無表情で無感動にも思える表情――。

 その顔に眺められている事実が、俺に恥辱を与え興奮を呼び戻した。

 一度、鎮まりかけていた俺自身が――

「……!」

 愛美の視線を浴び、再びムクムクとその頭をもたげてゆく――。

 その変化の一部始終を見届けた後――。

「触っても……いいですか?」

 と、愛美が俺にそう訊ねた。

「……」

 それが……「お詫び」? 俺は唖然としたまま、愛美を見る。

 その顔を見返した愛美は、俄かにその気質を変えた。

 それは狼狽えた俺の様子が彼女に余裕を与えた――とでも言うべきなのか。ともかく初めて見る、新たな愛美がそこに居た。

 それを知らしめる如く――愛美がニッと怪い微笑みを浮かべる。

「大丈夫――ですよ」

「な、何が……?」

「私にだって、知識くらいあります。だから――ホラ」

「――!?」

 俺の熱くなった部分に、ゾッと冷たい感覚が奔ってゆく。

 愛美は右手をすうっと伸ばし、立てた人差し指で触れ。それを反り返るラインに沿って、ツウーと動かしていた。

 愛美の中で一体、どの様なスイッチが切り替わっていたのだろう。それともそれこそが、秘めていた彼女の本質であるのか……。

 俺たちは先程のベッドの時と、完全に立場を逆にしていた。

 愛美の前で裸で立ち尽くす俺。その際に生じた情けなさが、彼女の誘いに対して辛うじて抵抗を見せる。

「そんなこと……しなくていいから」

 しかし――

「どうしてですか? だって、もう――こんなに」

 愛美は掌を開くと、それで俺の怒張を包み込んだ。

「うっ……」

 思わず漏れた声。それに呼応したように、愛美はクスッと笑う。

「さあ、こっちへ来て――楽にしてください」

 俺をベッドへと導くその言葉――。

 それを発した愛美の人形のような瞳が、俺を見据えていた。
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