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曖昧なままに
第3章 白くない聖夜
 俺は愛美にその身を任せるように、再びベッドに腰を深く下ろした。愛美が示した意向に、為すがままにされようとして……。

 十近くも年上のバツイチ男。その腐りかけたプライドが、その行動を否定している。

 しかしこの時の愛美の雰囲気は、恐ろしいまでに甘美。その言葉も眼差しも、まるで魔法の如く俺の全てを制そうとしていた。

 愛美を押し倒そうとする意志は、既に削がれ。俺は呆然としたまま、それからは彼女の行いだけを静かに待っていた。

「どうしたら、気持ちいいのでしょう?」

 ベッドに座る俺の前に跪き、そう優しく訊ねながらも。その手はもう俺を握り、そして擦るようにゆっくりと上下に動かし始めている。

「こんな感じで――いいですか?」

「く……」

 徐々にその手の速度が増して、俺は快感に押し流されるように両目を瞑る。応えようもない甘い声の問いが、頭の中に響いていた。

「このまま手で? それとも――口も使った方がいい、ですか?」

「!」

 愛美のまだ幼げな顔。その可愛らしい口が俺自身を含む。否応なくそれを想像し、鼓動がこれでもかと高まってゆく。

「ちゃんと答えてください。私――されたいように、いたしますから」

「口……で……」

 若干の敗北感と恥辱。徐々に荒くなる息で、俺はそう発した。

「……」

 すると愛美は手の動きを止め、その後に訪れたのはしばしの沈黙。

 それから――チョン――と接触した艶めかしい感覚を受ける。それに伴って、俺は思わず閉ざしていた視界を回復させた。

 愛美が僅かに突き出した舌先が、俺の突端に触れて――。

 上目使いの彼女が、俺の顔を見据えた。俺が目を開いたのを確認して、彼女は一度舌先を引くとふっと微笑を浮かべる。

 まるで、俺を弄び愉しむような愛美。それまで知っている彼女とは、あまりに違っている。しかし怪しさを携えつつも、その存在は何処までも魅力的だ。

「たぶん、上手にはできませんけど――」

 その言葉を皮切りに、愛美は口の業を始めてゆく――。

 ペロっと小さな舌を何度か這わせ、そして――

「ん……」

 短い言葉を漏らしスローモーションさながらの動作で、徐々に大きく開かれる口元。


 くちゅ……。


「あ……」

 それが俺の亀頭を、するりと呑み込んだ。
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