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曖昧なままに
第4章 飲み潰れた後
「いや、何でも――」
そう取り繕いつつも、俺は思っていた。
愛美が無かったことにしたいのなら、それでいいのかもしれない。あの時の彼女は、きっとどうかしてたのだ。
そして俺自身にも戸惑いはある。ならば仕切り直しをしたほうがいい。少なくとも、またこうして顔を合わせてくれている内に……。
もちろん、俺の中に妙な期待感が混在していたのも事実。だが只でさえ不確かなこの関係を、一時の流れにまかせ妙な方向に舵を切るのは好ましくない。そんな風に考えるのは、俺にまだ彼女と付き合いたいとの気持ちがある証拠だ。
ともかく今はそれまで通り普通に。そう思い直し俺は肩の力を抜く。
「流石に少し疲れてるのかな。最近、仕事に追われてたから」
「ご苦労様。今日はゆっくり飲んでくださいね」
「ハハ、どうも」
にこやかな雰囲気の愛美に見守られ、つい酒が進んでゆく俺。連日の深夜残業と、前日に続いての酒が響いていたのだろう。数時間後には、俺の酔いはかなり回っていた。
「帰りは、大丈夫ですか?」
店を後にすると、愛美は俺を心配して訊ねた。
「うん……タクシー拾うし」
そう答えながらも、俺の足取りはおぼつかない。そんな様子を見かねたのだろう。
「よかったら、私の車で送って行きますよ」
「いや……悪いよ」
「遠慮しないでください。さあ――」
そう言って愛美は、俺の腕を引いた。
「じゃあ……お願い」
既に酔いと疲労で眠気はピークに達している。俺は申し出に甘え、彼女の車へと導かれた。
「……」
ゆったりとした静かな運転で車に揺られる。襲ってきた睡魔に抵抗することもなく、俺は程無く眠りの中にいた。俺のアパートまでは車で十分余り。それにしては随分と長い時間だったような感覚はあった。
そう言えば俺……彼女にアパートの場所、教えたっけ? ふとそんな疑問に苛まれたが、それでも重い瞼を開こうとはしない。
「着きましたよ」
「ん……」
愛美の声を聴き、とりあえず見せた微かな反応。意識はまるではっきりとしない。
「こっちです。足元に気をつけてください」
ほとんど手を引かれるようにして、俺は何とか足を進めていた。何度かよろめきながら、それでも部屋の中には入ったらしい。
「さあ――ここに寝てください」
愛美の声だけが、頭の中に木霊してゆく――。
そう取り繕いつつも、俺は思っていた。
愛美が無かったことにしたいのなら、それでいいのかもしれない。あの時の彼女は、きっとどうかしてたのだ。
そして俺自身にも戸惑いはある。ならば仕切り直しをしたほうがいい。少なくとも、またこうして顔を合わせてくれている内に……。
もちろん、俺の中に妙な期待感が混在していたのも事実。だが只でさえ不確かなこの関係を、一時の流れにまかせ妙な方向に舵を切るのは好ましくない。そんな風に考えるのは、俺にまだ彼女と付き合いたいとの気持ちがある証拠だ。
ともかく今はそれまで通り普通に。そう思い直し俺は肩の力を抜く。
「流石に少し疲れてるのかな。最近、仕事に追われてたから」
「ご苦労様。今日はゆっくり飲んでくださいね」
「ハハ、どうも」
にこやかな雰囲気の愛美に見守られ、つい酒が進んでゆく俺。連日の深夜残業と、前日に続いての酒が響いていたのだろう。数時間後には、俺の酔いはかなり回っていた。
「帰りは、大丈夫ですか?」
店を後にすると、愛美は俺を心配して訊ねた。
「うん……タクシー拾うし」
そう答えながらも、俺の足取りはおぼつかない。そんな様子を見かねたのだろう。
「よかったら、私の車で送って行きますよ」
「いや……悪いよ」
「遠慮しないでください。さあ――」
そう言って愛美は、俺の腕を引いた。
「じゃあ……お願い」
既に酔いと疲労で眠気はピークに達している。俺は申し出に甘え、彼女の車へと導かれた。
「……」
ゆったりとした静かな運転で車に揺られる。襲ってきた睡魔に抵抗することもなく、俺は程無く眠りの中にいた。俺のアパートまでは車で十分余り。それにしては随分と長い時間だったような感覚はあった。
そう言えば俺……彼女にアパートの場所、教えたっけ? ふとそんな疑問に苛まれたが、それでも重い瞼を開こうとはしない。
「着きましたよ」
「ん……」
愛美の声を聴き、とりあえず見せた微かな反応。意識はまるではっきりとしない。
「こっちです。足元に気をつけてください」
ほとんど手を引かれるようにして、俺は何とか足を進めていた。何度かよろめきながら、それでも部屋の中には入ったらしい。
「さあ――ここに寝てください」
愛美の声だけが、頭の中に木霊してゆく――。