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曖昧なままに
第5章 尚、儘ならず
「へえ。割と、気を遣っているんだね」
俺がそう感心すると――
「そうですよ。私ってこう見えて、結構ストレス抱える体質なんです。だからたまには、発散したいんですけどね―」
彼女はそう答えつつ、改まるように俺の顔をじっと見つめる。
「え……何か?」
俺がその視線の真意を訊ねると、奈央はくすっと意味ありげに微笑んだ。
「中崎さん――この間の約束、覚えてくれてます?」
甘えるような声でそう問われ、俺はその約束とやらを頭に浮かべる。
それは忘年会に彼女と話した時。今度飲みに誘うように言われて、俺も確かにそれを了承していた。
だがそんな口約束は大抵、有耶無耶になることが多い。少なくともこんなに早く、彼女の方からそれを切り出されるとは、考えてもいなかった。
「ああ、覚えてるけど……」
「それは、良かった。処で私――今週末、暇なんですよね」
そんな甘えた顔に絆されて、と言うべきであろうか。
「じゃあ、軽く飲みにでも――」
俺がそう口にした途端――
「はい。是非」
彼女は食い気味に、それを受け入れていた。
そんな感じでその週末の夜。俺は西河奈央を誘って、居酒屋へ行くことになる。
しかし俺が誘った、とするのは少し語弊があるまいか。あれだけ『誘ってオーラ』を出されれてしまえば、無視する訳にはなかなかいかない。
だがそれも、言い訳に過ぎないのだろう。俺が彼女と飲みたくなかったかと言えば、その答えは否である。
そして何故、言い訳する必要があるのかと考えた時。頭の中に浮かぶのは、やはり愛美の顔。
しかし俺たちの関係を省みれば、言い訳など無用のように思えなくもなかった。
俺がそう感心すると――
「そうですよ。私ってこう見えて、結構ストレス抱える体質なんです。だからたまには、発散したいんですけどね―」
彼女はそう答えつつ、改まるように俺の顔をじっと見つめる。
「え……何か?」
俺がその視線の真意を訊ねると、奈央はくすっと意味ありげに微笑んだ。
「中崎さん――この間の約束、覚えてくれてます?」
甘えるような声でそう問われ、俺はその約束とやらを頭に浮かべる。
それは忘年会に彼女と話した時。今度飲みに誘うように言われて、俺も確かにそれを了承していた。
だがそんな口約束は大抵、有耶無耶になることが多い。少なくともこんなに早く、彼女の方からそれを切り出されるとは、考えてもいなかった。
「ああ、覚えてるけど……」
「それは、良かった。処で私――今週末、暇なんですよね」
そんな甘えた顔に絆されて、と言うべきであろうか。
「じゃあ、軽く飲みにでも――」
俺がそう口にした途端――
「はい。是非」
彼女は食い気味に、それを受け入れていた。
そんな感じでその週末の夜。俺は西河奈央を誘って、居酒屋へ行くことになる。
しかし俺が誘った、とするのは少し語弊があるまいか。あれだけ『誘ってオーラ』を出されれてしまえば、無視する訳にはなかなかいかない。
だがそれも、言い訳に過ぎないのだろう。俺が彼女と飲みたくなかったかと言えば、その答えは否である。
そして何故、言い訳する必要があるのかと考えた時。頭の中に浮かぶのは、やはり愛美の顔。
しかし俺たちの関係を省みれば、言い訳など無用のように思えなくもなかった。