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曖昧なままに
第5章 尚、儘ならず
訪れたその週の金曜日――。
そんな訳で俺と西河奈央は、居酒屋のカウンターで肩を並べていた。
「プハッー! やっぱ冬でも、ビールが最高!」
奈央は大ジョッキのビールを豪快に飲み干し、満足そうに声を上げる。
「ハハ……凄いね」
その様子にやや圧倒されながら、俺もジョッキを傾けた。
彼女は結構な酒好きらしく、それもかなりイケる口のようだ。徐々に陽気になる奈央と、俺は思いの外楽しい時間を過ごしていた。
互いに酒が進むと、話は二人の共通項である離婚の話題へと至る。この前も聞いているが、俺と同じく彼女もバツイチだ。
最初は割と真剣なトーンで話していたが、その内容は次第に妙な方向へ舵を切ろうとしている。
それは奈央の、こんな一言がきっかけだった。
「中崎さん。結婚してた時って、どれくらいのペースでしてたの?」
いい感じに酔いが回った彼女は、既にタメ口である。
「ペースって、何の?」
そう聞き返すと――
「セックス」
その直球な言葉に、俺は思わずむせ返りそうになるのを何とか堪えた。三十過ぎの男が、これくらいで狼狽えるのも見っともない。
俺は平静を装いつつ、その問いの答えを考えた。
「そりゃあ新婚の時は、それなりにあったけど……」
「週に3回とか?」
「まあ、そんな頃もあった……かな」
「いつから減ったの?」
「さあ……覚えてないけど。でも例えばさ――こっちが求めた時に、相手が嫌な顔したとするじゃない」
「うん」
「そしたらもう――次からは、まずその顔が頭に浮かぶんだよね。そんなことが何回かあると、徐々に気が引けていって――」
「でもさ。たぶん、それ奥さんも同じだと思うよ」
「そうかもね」
流石に妻に浮気されたことまでは話していない。だが確かに、セックスレスになっていたのも事実だった。それが原因の一端であることを、否定はできまい。
「私ね。セックスってとても大事だと思う。裸で求め合えば、消えるわだかまりもあるんだよ。きっと――」
奈央は、そう力説するや一転。今度は酔ってトロンとした瞳を、俺へと向けた。
そんな訳で俺と西河奈央は、居酒屋のカウンターで肩を並べていた。
「プハッー! やっぱ冬でも、ビールが最高!」
奈央は大ジョッキのビールを豪快に飲み干し、満足そうに声を上げる。
「ハハ……凄いね」
その様子にやや圧倒されながら、俺もジョッキを傾けた。
彼女は結構な酒好きらしく、それもかなりイケる口のようだ。徐々に陽気になる奈央と、俺は思いの外楽しい時間を過ごしていた。
互いに酒が進むと、話は二人の共通項である離婚の話題へと至る。この前も聞いているが、俺と同じく彼女もバツイチだ。
最初は割と真剣なトーンで話していたが、その内容は次第に妙な方向へ舵を切ろうとしている。
それは奈央の、こんな一言がきっかけだった。
「中崎さん。結婚してた時って、どれくらいのペースでしてたの?」
いい感じに酔いが回った彼女は、既にタメ口である。
「ペースって、何の?」
そう聞き返すと――
「セックス」
その直球な言葉に、俺は思わずむせ返りそうになるのを何とか堪えた。三十過ぎの男が、これくらいで狼狽えるのも見っともない。
俺は平静を装いつつ、その問いの答えを考えた。
「そりゃあ新婚の時は、それなりにあったけど……」
「週に3回とか?」
「まあ、そんな頃もあった……かな」
「いつから減ったの?」
「さあ……覚えてないけど。でも例えばさ――こっちが求めた時に、相手が嫌な顔したとするじゃない」
「うん」
「そしたらもう――次からは、まずその顔が頭に浮かぶんだよね。そんなことが何回かあると、徐々に気が引けていって――」
「でもさ。たぶん、それ奥さんも同じだと思うよ」
「そうかもね」
流石に妻に浮気されたことまでは話していない。だが確かに、セックスレスになっていたのも事実だった。それが原因の一端であることを、否定はできまい。
「私ね。セックスってとても大事だと思う。裸で求め合えば、消えるわだかまりもあるんだよ。きっと――」
奈央は、そう力説するや一転。今度は酔ってトロンとした瞳を、俺へと向けた。