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曖昧なままに
第6章 肝心なルール
 俺の最初の懇願は、愛美により了承された。

 ゆっくにとした動作で、しかし確実に。愛美は丁寧な所作で、服の一つ一つを剥がしてゆく。

 そして上下の下着のみの姿で、俺の顔を窺った。

「やっぱり、恥ずかしい」

 頬を俄かに赤らめ、彼女が見せる照れた笑み。それでも視線を十分に意識しつつ、両手を背中に回す。プツ――と軽い反動があり、ホックが外れブラが落ちる。

 同時に愛美は、胸を両手で覆い隠した。

「ちゃんと見せて」

「は、はい……」

 また受け入れられた言葉。愛美はダラリと両腕を下ろし、恥ずかしさに耐えるように身体をくねりと捩った。

 小振りで形の良い胸が顕わになり、二つの乳首がピンとやや上方を仰ぐ。思わず顔を叛けた愛美。その身体を小刻みに、震わせた。

 目にするのが初めてでなくとも、新たな興奮が俺の中に湧き上がる。

「触れても?」

「……」

 黙ったままコクリと頷く愛美。それを確認して、両手を胸へと伸ばす。

「あ……んっ!」

 白い膨らみの柔らかさと先端の感触までを、俺はじっくりと愉しむ。それを受けて、愛美の吐息が漏れ始めた。

 ともすれば、俺の支配下にあるような錯覚。だが全く違う。俺は彼女の許可の元に、行為に及んでいるに過ぎなかった。

 愛美は全裸とはならず、まだ一枚のベールを残している。つまり彼女はそれを脱ぎ去ることをしない。否、できないという意思の表れだ。

 『無理にしては駄目』――彼女の言葉を借りれば、そうなろう。そのルールに従うとは、そういうことである。

 それを犯さない以上、愛美にイニシアティブがあるのは明白。それを示すように、彼女の攻撃的な一面が顔を出そうとしていた。

「次は私が――服を脱いで、どうぞベッドへ」

 愛美を一気に押し倒したい衝動が、無い訳ではない。しかし俺は言葉に倣うと、パンツ一枚になり身体をベッドの上へ横たえた。不思議とそうすることが心地よく思える。

 愛美の言葉と瞳は、一種特別な力さえ感じさせた。

「それでは――」

 と、愛美は俺に添い寝する。そして抱き枕でも抱くように、俺の右サイドにピタリと肌を寄せた。直の胸の肌触りが、腕にぞわっとした感触を伝えてゆく。

 愛美は互いの乳首を、擦り合わせつつ――

「どの様に、致しましょうか?」

 まるでオーダーでも取るように、そう訊ねていた。
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